第13話 「影狼の試練、燃え盛る大地」

ヴァルガルドを新たな仲間として迎えたせつなたちだったが、彼の力がどれほどのものなのか、まだ未知数だった。


 「せつな、ほんとにコイツ大丈夫なのか?」


 ケイルが渋い顔でヴァルガルドを見下ろす。黒い毛並みを持つ狼は、どこか人間臭い表情でため息をついた。


 「主の命令とあらば、戦わぬことはない。しかし、力を試したいのならば相応の相手が必要だろう。」


 「それなら、ちょうどいい依頼があるよ。」


 フィオナがギルドの掲示板から一枚の依頼書を持ってきた。


 『《灼熱の大蛇》討伐依頼 報酬:金貨80枚』


 「最近、近くの荒野で暴れてるらしいよ。強敵だし、ヴァルガルドの戦力を試すにはちょうどいいんじゃない?」


 「なるほど……いいじゃん。試しにブッ倒しに行くか。」


 せつなが不敵に笑い、ヴァルガルドの頭を軽く叩いた。


 「お前の力、見せてみろよ。」


 「フン……後悔するなよ、人間。」


***


 《灼熱の大蛇》が潜む荒野は、灼熱の大地と化していた。空気は熱を帯び、遠くに陽炎が揺らめいている。


 「まるで地獄みたいだな……」


 ケイルが汗を拭いながら剣を構える。


 次の瞬間、地面が大きく揺れた。


 ——ズズズッ……!


 巨大な影が砂の中から姿を現した。それは、紅蓮の鱗を持つ巨大な蛇。全長十メートルはあろうかという巨体が、じりじりとこちらを睨みつけていた。


 「来た……!」


 フィオナが詠唱を開始し、ケイルは前へ出る。しかし、せつなは静かにヴァルガルドへ視線を送った。


 「さぁ、見せてくれ。お前の力を。」


 ヴァルガルドは低く唸り、影が揺らめく。そして、次の瞬間——


 彼の体が闇と同化し、蛇の巨体へと一気に駆け上がった。


 「影牙——《ブラックファング》」


 黒い牙が、蛇の紅蓮の鱗に食らいつく。鉄のように硬いはずの鱗が砕け、血が噴き出した。


 「……いいな。じゃあ、私も行くか。」


 せつなが手をかざすと、周囲の影がうねるように集まり始めた。


 「《冥府の呪縛》——!」


 黒い鎖が地面から伸び、蛇の動きを封じる。


 「今だ、ケイル!」


 「任せろッ!」


 ケイルが渾身の一撃を放つ。剣に魔力を込め、蛇の首元へと突き立てると、鮮血が舞い上がった。


 灼熱の大蛇は、断末魔の叫びとともに地面へと崩れ落ちた。


***


 討伐を終えた一行は、ギルドで報酬を受け取った。


 「ヴァルガルド、なかなかやるじゃん。」


 せつなが笑うと、狼は鼻を鳴らした。


 「当然だ。だが、まだ本気ではない。」


 「へぇ……なら、もっと強い敵をぶつけてやろうか?」


 「フン……好きにしろ。」


 新たな仲間と共に、せつなたちの冒険は加速していく。

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