第12話 告げられし運命、迫る影

「──”墓守”よ。お前の力が、覚醒し始めたようだな。」


冷たい夜風が吹く中、その声は闇の奥から響いた。


「……サーヴェル!?」


せつなが振り返ると、漆黒のマントを纏った男──サーヴェルが微笑んでいた。


「久しいな。あれから少しは成長したか?」


ケイルがすぐに剣を抜き、フィオナが魔法の詠唱に入る。


しかし、サーヴェルは軽く手を上げ、


「今日は戦うつもりはない。」


と言った。


「ただ、“忠告”しに来ただけだよ。」


「忠告……?」


せつなが警戒しながら問い返すと、サーヴェルはゆっくりと歩を進めた。


「“墓守”の力が覚醒したことで、お前は”目をつけられた”。」


「……目をつけられた?」


「そう。貴様が持つ”導く力”は、この世界の”秩序”を乱すものだ。」


サーヴェルの目が、異様な光を放つ。


「“世界の意志”は、それを許さない。」


「……何を言ってるの?」


フィオナが眉をひそめる。


「この世界には、“異質なもの”を排除しようとする”力”があるのさ。」


サーヴェルは指を鳴らした。


すると、闇の中から何かが動く音がした。


──いや、それは”何か”ではない。“誰か”だった。


「……嘘でしょ……!?」


せつなが息を呑む。


そこに立っていたのは、“死んだはずの冒険者”たちだった。


◆◇◆


「……これは、一体……!?」


「驚いたか?」


サーヴェルは楽しそうに笑った。


「“墓守”よ、お前は死者の魂を視ることができるな?」


せつなは無意識に拳を握った。


「彼らは……この前の依頼で、死んだ冒険者たち……!」


そう、せつなたちは数日前、魔物討伐の依頼を受けた。


しかし、その依頼で出会った冒険者パーティーは、既に魔物に喰われていた。


「……何が目的なの、サーヴェル。」


「簡単な話さ。」


サーヴェルは不敵に笑った。


「“墓守”がどこまでの力を持っているのか、試させてもらおう。」


「……!!」


せつなの脳裏に、“あのときの彼らの最後の言葉”が蘇る。


──「頼む……せめて、俺たちの魂だけは……」


せつなは強く歯を噛みしめた。


「……やるしか、ないんだね。」


「せつな……!」


ケイルが剣を構え、フィオナも杖を握りしめる。


「行こう、私たちで”救う”んだ……!」


◆◇◆


戦いは激しくなった。


死者の体は、生前の記憶をなぞるように動く。


彼らはかつて熟練の冒険者だっただけに、その剣技や魔法は未だ衰えていない。


「こいつら……強い!」


ケイルが剣を振るいながら叫ぶ。


「……でも!」


せつなは杖を掲げた。


「“魂縛”──”安らぎの鎖”!!」


彼女の杖から放たれた鎖が、死者たちを優しく包み込む。


「……頼む、せつな。」


死者の瞳から、苦悩が消えた。


「“導いて”くれ……。」


「……うん。」


せつなが頷くと、鎖が光を放ち、彼らの魂は浄化されていった。


最後の一人が消える直前、彼は微笑んだ。


「ありがとう……“墓守”よ。」


──戦いは、終わった。


◆◇◆


「……やるじゃないか。」


サーヴェルが拍手を送る。


「どうやら、“導く者”としての力は本物らしい。」


せつなは息を切らしながら、睨みつけた。


「……私たちを、試すために……こんなことを……!」


「試す、ね。」


サーヴェルは薄く笑った。


「だが、貴様はもう”後戻りできない”ぞ?」


せつなは息を呑む。


「“墓守”が目覚めた以上、世界はそれを黙って見てはいない。」


「どういうこと……?」


サーヴェルはゆっくりと背を向けた。


「これから、お前は”本当の敵”と向き合うことになる。」


「本当の……敵?」


「そう。」


サーヴェルは一度立ち止まり、振り返った。


「“異世界の墓守”よ。“世界の意志”がお前を排除しに来る。」


そして、彼は夜の闇へと溶けるように消えた。


◆◇◆


──”世界の意志”が、私を排除しに来る?


せつなは、強く拳を握った。


“墓守”の力が目覚めたことで、彼女はこの世界にとって”異質な存在”になった。


──もし、それが”許されない”ものなら。


「……私は、どうすればいい?」


せつなは夜空を見上げた。


その胸の中には、得体の知れない”不安”が広がっていた。




次回予告:“世界の意志”とは何なのか。

せつなたちは新たな”真実”に迫る。


そして、旅の途中で”ある人物”と出会う──。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る