第14話「亡者の王、沈黙の城」

ヴァルガルドを仲間に加え、《灼熱の大蛇》を討伐したせつなたちは、次の依頼を探していた。


 ギルドの掲示板には様々なクエストが並んでいるが、ひときわ異彩を放つ依頼が目に留まる。


 『死者の城調査依頼——依頼主不明』


 「なんか、胡散臭くない?」


 フィオナが眉をひそめながら依頼書を見つめる。


 「死者の城……?」


 ケイルが声を低くする。


 「聞いたことがある。廃墟となった城だが、数年前から亡者が徘徊するようになったとか……。」


 「そういうの、大好物なんだけど。」


 せつなが楽しげに笑うと、ケイルが肩をすくめた。


 「ま、オカルト好きにはたまらねぇだろうな。」


 ヴァルガルドは鼻を鳴らし、鋭い瞳で依頼書を見つめる。


 「主よ、その城……ただの廃墟ではないかもしれぬ。」


 「ほう……?」


 「影の匂いがする。俺の記憶が確かなら、そこには——《亡者の王》が眠っているはずだ。」




 死者の城——かつて王都の外れにあった城は、今や闇に包まれた異界のような空間と化していた。


 瓦礫と化した回廊、壁に染み付いた血痕、そして……無数の動かぬ騎士たち。


 「こいつら……ただの死体?」


 せつなが近寄ると、カタリと鎧が鳴った。


 「違うッ!下がれ!」


 ヴァルガルドの警告が飛ぶと同時に——死者たちがゆっくりと立ち上がる。


 「亡者どもが、お出迎えか。」


 ケイルが剣を構え、フィオナは詠唱を開始する。


 せつなはゆっくりと前に出た。


 「《冥府の呪縛》——。」


 影が伸び、亡者たちの足元を縛りつける。しかし——


 「……効かない!?」


 影の鎖が弾かれ、亡者たちはゆっくりとせつなへと迫る。


 「こいつら、普通の亡者じゃねぇな……!」


 その瞬間、城の奥から重々しい声が響いた。


 「——愚かな生者よ。我が城に何用か?」


 闇の奥から、黒き鎧を纏った男が姿を現す。


 「……まさか、こいつが。」


 ケイルが息を呑む。


 《亡者の王》——アスモダイ


 「ふむ……その影使い、貴様——我と同じ力を持つ者か?」


 アスモダイの眼が、じっとせつなを射抜いた。


 「……面白い。ならば試そう。我が力に耐えられるか——!」


 闇がせつなたちを包み込む。


 戦いの幕が、今開かれる——。

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