第11話 絶望の縛鎖、解かれし封印

「──”開門”」


サーヴェルが低く囁いた瞬間、闇の奥から”それ”は姿を現した。


黒い霧のような体を持ち、無数の手が蠢いている。

一つの形に定まらず、しかし確かに”意思”を持つ何か。


──魂喰らいの亡者(ソウルイーター)。


「……やばいな。」


ケイルが剣を構えながら呟く。


「こいつは、ただの操り人形とは違う。ガチの”怪物”だ。」


「“魂喰らい”って……まさか、触れただけで魂を奪われるとか!?」


せつなが声を上げると、サーヴェルは愉快そうに笑った。


「ご名答。“ソウルイーター”は、生者の魂を喰らい、力とする。“死”よりもなお恐ろしい存在だ。」


黒い霧がうごめき、獲物を探すように広がっていく。


──そして、せつなたちに襲いかかった。


「くるぞ!!」


◆◇◆


“ゴオォォォ……!!”


黒い霧がせつなを包み込もうとした瞬間、


「──”結界術・霊障断ち”!」


フィオナの杖が光を放ち、霧を弾き飛ばした。


「この程度の低級霊体、術式で弾くのは容易いわ。」


「ナイス、フィオナ!」


「でも、数が多い……このままではジリ貧よ!」


「……なら、やるしかねえな。」


ケイルが剣を肩に担ぎながら、不気味に笑った。


「俺の剣は”実体”のないものにも効く。“見えざる敵”を断つための技……試してみる価値はあるだろ?」


「……! ケイル、あんたまさか──」


「いくぜ。」


ケイルは深く息を吸い込むと、剣を大きく振りかぶった。


──**“幽冥一閃”!!**


刹那、彼の剣が”空を斬る”。


だが、次の瞬間、黒い霧がまるで”断ち切られたかのように”裂けた。


「……通った!?」


「言っただろ。俺の剣は、“そういうもの”だってな。」


ケイルが口元を歪める。


だが──


「フフ……お見事。しかし、それだけでは”倒しきれん”ぞ?」


サーヴェルが指を動かすと、霧はすぐに元の形へと戻った。


「……やっぱりか。」


ケイルは舌打ちし、後ろに下がる。


「俺の剣でも”一時的に霧を断つ”ことはできるが、コイツの本質には届かねえ。」


「……やはり”核”があるのね。」


フィオナが鋭く分析する。


「霧の本体を倒すには、“魂の中核”を破壊するしかない……!」


「でも、どこにあるの!?」


せつなが叫ぶ。


「……“墓守”なら、視えるんじゃないか?」


ケイルの一言に、せつなは息を呑んだ。


「……っ!」


──”墓守”の力。


それは、“魂を導く者”。


死者の魂を視、彼らを安らかに眠らせる力。


(……今なら、わかるかもしれない。)


せつなは目を閉じ、意識を研ぎ澄ませた。


──すると、黒い霧の中に”微かな光”が浮かび上がった。


「……見えた……!」


「どこだ、せつな!」


「アイツの胸の奥……そこに”核”がある!」


「よし、ならぶち抜くだけだ。」


ケイルが剣を握り直す。


だが、


「……簡単にやらせると思うか?」


サーヴェルが指を鳴らすと、霧の亡者が暴れ出した。


「くっ……!」


フィオナが防御魔法を展開するが、霧の猛攻は激しさを増していく。


(このままじゃ……!)


せつなは奥歯を噛み締めた。


──”墓守”の力……。

もっと……もっと、引き出せれば……!


「……!」


せつなの中で、何かが”弾けた”。


──すると、彼女の杖が淡く光を放ち始めた。


「……これ……?」


「おい……その光、なんだ?」


ケイルが驚きの声を上げる。


「……わからない。でも、今なら……できる気がする!」


せつなは杖を霧の亡者に向けた。


「“導け”──”墓守の鎖”!!」


彼女の杖から、光の鎖が放たれる。


それはまるで生き物のようにうねり、霧の亡者を縛り上げた。


「なっ……!?」


サーヴェルが動揺する。


「この鎖は……まさか……“魂縛”!?」


「今だ、ケイル!!」


「……チッ、やってやるよ!!」


ケイルが剣を振り上げる。


「──”幽冥絶刀”!!」


ズバァッッッ!!!


ケイルの剣が、光の鎖に縛られた”核”を貫いた。


「ギィイイイイイイ!!!!」


霧の亡者が、断末魔の悲鳴を上げる。


そして──


完全に霧が霧散した。


「……やった……?」


せつなが息を切らしながら呟く。


「……倒したな。」


ケイルが剣を収めた。


「……“墓守の鎖”、か。なかなか興味深い力だ。」


サーヴェルが口元を歪めた。


「しかし、これはほんの”序章”に過ぎんよ。」


彼は霧とともに姿を消し、


「また会おう、“墓守”よ。」


という言葉だけを残した。


「……逃げたか。」


ケイルが舌打ちする。


せつなは、胸の鼓動が早くなるのを感じた。


──”墓守”の力が、目覚め始めている。


だが、それは同時に”何か大きな存在”を呼び寄せている気がした。


(……私は、これから何と戦うことになるんだろう?)


そう思いながら、せつなは強く杖を握った──。





次回予告:サーヴェルとの戦いは終わった。

しかし、せつなの力が目覚めたことで、新たな脅威が迫る……!?

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