人を愛するということ。

第36話

「てめぇか、俺の女と不倫しやがったのは」


「は?俺の女?不倫…って」


「ごめんね?龍成くん」


「え」


「ぶっ殺してやる!!」


「ぅお」




電話で呼び出された先の家のドアが開いたら、まさかの包丁握りしめた旦那が登場って、さすがに笑えねぇわ。



──でも今はあの幼かった俺じゃない。



振り下ろされた包丁はいくらでもかわせるし、一発入れるだけで相手の手から包丁を落とすこともできる。





「ぅぐっ…!」


「たぁくん!大丈夫?!」


「レミさ~ん。結婚してんならしてるって言っといてよ。そしたら手なんか出さねぇのに。初めてレミさんの家に行けるって、俺無駄にテンション上げたわ」


「龍成くん…」


「じゃあな。それなりに楽しかった」


「えっ?待っ…」





勘弁してくれよ。誰が好き好んで人妻を相手にするか。面倒な関係を避けてきたってのに、不倫なんて面倒事の極みだろ。





「あれ?龍成?」


「おー、サナじゃねぇか」


「わーい!会いたいって思ってたら会えた!運命?!」


「だな」


「ねっ!嬉しすぎ!こんな所で何してんの?」


「ヒマしてたわ」


「マジ運命じゃん!遊ぼ!」





レミさんのマンションから出ると、以前遊んだ覚えのある女が。



前回いつ会ったか覚えてねぇけど、一度会った人間の顔は忘れない。


そして体の関係を持った女は、名前も忘れない。



これは一種の特技だな。



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