第33話

─ああ、『キス』ってやつをしてほしいのか。



屋上へ続くドアの前、非常階段の踊り場。周りに人気はない。



また、計算しつくされたようなこの状況。手に取るように自然とわかってしまう、彼女の思惑。



例え見た目が良かったとしても、このあざとさは損じゃないか?他の男は、これが可愛いと思えるのか?



俺は可愛いというよりかわいそうに見える。



そう思いながらも、その計算通りになるよう、先輩の唇に自分の唇を押し当てた。



計算高いと感じる自分の方が、よっぽど計算高いのだろう。





────────





「みんなが法律みたいに神田龍成には告白しちゃいけないって言ってたけど、普通に付き合えるんじゃん」


「優莉、何度も言ってるけど、神田グループの社長の息子に手を出しちゃいけないって意味でみんな告らないんだよ?この学校の暗黙のルールなんだってば」


「みんなどうせフラれるからでしょ?めちゃくちゃイケメンだもん」


「まぁそれもあるかもだけどさぁ、でもそういうことじゃなくて…」


「難攻不落の神田龍成を落としたんだから、わたしの可愛さ本物だよね!」


「優莉…あんたね…」


「イケメンの彼氏もいてその彼氏は超お金持ちで、わたし自身も最強に可愛いなんて、もう罪だよねっ!妬まれても仕方ないよねっ!」


「はぁ…」

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