第32話
───学校の廊下でたくさんの生徒の目がある中、その上、相手が絶世の美女なんて持て囃されている早見先輩ということもあって、俺と先輩が付き合うことは瞬く間に校内に広がった。
俺は「付き合う」といった意味も、よく理解していない。
それなのに了承したのは、この人がこの場で断られたら、かわいそうだと思ったからだ。
同時にそう思われることを見越して、敢えてこの場を選んで告白したのなら、とんでもなく強かな人だと思った。
上目遣いで俺を見つめるこの人を、素直に可愛いとは思えなかった。
──────
「神田くん、今まで彼女いたことある?」
「ない」
「じゃあわたしが初カノなんだね!嬉しいなぁ!」
自然の流れとでも言うように、両手で俺の腕に抱きつき、しなだれる。
付き合うと、こういうことを普通にするものなのか。
「一緒に帰りたいなぁ。デートしたいなぁ。学校以外でも会いたいよ」
「それは…」
「わかってるよ!おうちが厳しいのはじゅーぶんわかってる!でも寂しくて…。わがまま言ってごめんね?」
「……」
「……」
無言で数秒目を合わせ、計算したかのように瞳を閉じる先輩。
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