第29話

社長室内にあるソファに座り、テーブルにノートパソコンを置く。何となく近づけない距離を感じながら、父さんに尋ねた。





「じゃあ一つ目。どんな仕事をしているか」


「総合商社の社長職だ。そんなこともわからんとは…」


「はいはい。次、どうしてその仕事を選んだか」


「生まれた時から決まっていた。選択肢などない」


「あなた、さすがに学校の課題でその答えは…」


「いいよ。次、仕事をしていて楽しいと思うことは?」


「仕事は楽しむものではない。やりがいを実感しながら成長していくものだ」


「…次、この仕事はどんな人が向いているか」


「責任感と統率力、計画性、人望があり、将来を見据える能力がある者だな。経営理念をしっかりと持ち、何事も他人のせいにせず、またどんな下層社員の為にも頭を下げられるようでなければ務まらん。わかったか?お前もそのようにならなければ」


「あ~わかったわかった!次!何の為に仕事をしているか!」


「……生きる為だ」


「………ん。もう大丈夫。聞きたいこと聞けたから帰るよ」


「え?もういいの?せっかくの機会なんだから…」


「十分聞けたよ。父さん、忙しいのに時間作ってくれてありがとう」

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