第28話

おじさんが立ち去り、社長室に入室。



室内の重厚感に、急激に身体が重くなった。



社長席に座る父さんが目に入る。また怖い顔をして、パソコンを睨みつけている。





「あなた、こちらへいらして。龍成の課題、始めましょう」


「話ならこのまま聞く」


「─あなた…」


「俺は忙しい。このままでも問題ないだろう」


「で、ですが、この為に予定は空けていましたでしょう?学校の大事な課題なのですから…」


「専務が次期専務に千葉を推していると橘から情報が入った。千葉が専務に値するか確認を取らねばならない。どちらが大事かわからないか?」


「……」


「いいよ、母さん」


「龍成…」





どうせこんなことだろうと思った。



父さんは仕事を前にしたら、俺の課題、いや、俺そのものの価値なんてゼロに等しいだろう。



別に期待も何もしてないし、頼んでもいないのに母さんが張り切ってただけだし、俺としては課題さえできれば問題ない。



問題…ない。

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