さよならの前に。

第5話

「俺、今日は歩いて帰る」


「なっ…!何を仰いますか、龍成様。車にお乗りください。どれほど外は危険で溢れているか、ご存知でしょうに」


「ああ。毎日耳にタコが何匹もできるくらいにね。あんたや母さんの話はうんざりだよ」


「でしたら」


「友達があそこの河原に猫が捨てられてたって言うんだ。見つけたら、俺飼いたい」


「猫……、いや、しかし……」


「かわいそうだもん。そんなひどい話聞いて、何もしないようなやつになりたくない」


「龍成様……」


「本当かわかんないしさ、見に行くだけ行かせて!奏も行くって言ってたんだ!」


「そ、それならすぐ近くまで車で参りましょう。猫を探している間は、そばでお待ちしております。何より奥様に了承を得ませんと、飼うことはできませんので…」


「わかった!車で待ってて!友達と待ち合わせしてるから!」


「えっ?!お待ちください!龍成様!」

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