one's true feelings
第12話
「綺羅ちゃん♪今日こそΟΚ貰える?」
『だからあげませんっ!』
ぷいっと顔を背けて向こうへと歩いていく綺羅ちゃんを見つめて、俺はふっと一人、苦笑いを零す。
『懲りませんねー先輩。これで10敗でしょ?』
今日も振られたか…。なんて思っている所に、呆れた様子の声が聞こえてきた。
一個下の後輩の荒木だ。
「てめぇ。それが先輩に言う言葉か。ってか、よくそんなん数えてんね…。」
『そりゃ目立ちますし。でも、海野一人ならまだしも、複数の後輩口説いてるでしょ。』
「失礼な。好きだとか付き合ってとか言ってるのは綺羅ちゃんにだけだ。」
俺はそう言うも、荒木は疑わしげに肩を竦める。
今年この高校を卒業した俺が5月に再び母校にいるのは、ΟΒも含めての演奏会の練習をしに来たから。
…って言うのは初めの理由。今ではもう、綺羅ちゃんに会いたい為が過半数を占めている。
初めてΟΒとしてここに来た時今年の新入生達を見て、綺羅ちゃんに出会った。
皆(勿論女の子が)初々しくて可愛かったけど、その中でも彼女は、俺の好みド真ん中だった。
柔らかそうな黒髪のポニーテール。可愛い笑顔で、優しくて、周りに気遣いも出来て。
すぐに、好きになった。
それからほぼ毎日来てはアタックをしているけど、今日まで見事に全敗。
可愛い綺麗とかは他の子にも言ってるけど、告白は、本当に綺羅ちゃんだけだ。
『ま、程々にしてあげて下さいね。』
――結局信じてくれないまま荒木は去り、
『弥彦先輩!』
代わりに現れたのは、可愛い後輩の内の一人。
一年生の未玖ちゃんだ。
何回も来ている為、勿論顔馴染みだ。
「何?未玖ちゃん。」
『えっと、この演奏の仕方を教えてほしいんですけど…、』
「どれどれ?」
未玖ちゃんが持ってきた楽譜を見ようと、彼女の前で少し前屈みになる。
指している箇所を見つけ、教えようとしたその時。
―…カタッ。
後ろで何か音がしたので、なんだろうと振り返る。
『―…っ、』
「…綺羅ちゃん?」
ここから2つ目の教室から出てきたらしい綺羅ちゃんは、目を大きく見開き呆然と立っている。
―…けれど次の瞬間、俺達に背を向けて、ダッシュで走り出してしまった。
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