第3話
(……あれ?)
電気が、付いてる。
見つめた先、俺等が吹奏楽部の部室として使っている、【音楽室】と書かれたプレートの下にあるドア。
……の、半分よりちょっと上にある小窓が光っている。
という事は、中で電気が付いているという事で…。
(誰かいんのかな…。)
そう思いながら、俺はちらりと腕時計を覗き込む。
少し前にも見たと思うけど、今の時刻は午後5時半。
高1の10月も中旬に入った事で、秋という季節が本格的に色味を帯び始め、雨が降っていない今日は、肌寒くて乾きを帯びた空気を肌に感じた。
5時半になった今、窓越しに見える空はもう殆ど明るみをなくし、紺色と黒色の間のような、なんとも表現し難い色に塗られていた。
今日は土曜で、部活がいつもより3時間早く終わって、楽器をしまいつつ他の部員達と少し部室でくつろいだ後、俺は家に帰った。
途中で1時間程本屋に籠もり、家に着いた所で珍しく部室に携帯を忘れた事に気付いた。
家に着くまで気付かなかった―…、そんな情けない自分に溜め息を吐きながらも、仕方なく、学校への道程へと踵を返したのだった。
誰か残って練習でもしてるのかと思ったけど、あいにく中からは、クラリネットやフルート等の、楽器の音は全く聞こえない。
という事は…、
(ったく…、誰だ?最後に出たやつは…。)
誰かによる電気の消し忘れだと思った俺は、月曜日にその犯人をいじめてやろうと(勿論悪意の元ではなく、からかう意味で)決めた。
こんなドジをするのは相田の野郎くらいだな―…、そう思いながらドアを開けて、
「……、」
驚いて一瞬、らしくなく固まってしまった。
てっきり誰もいないと、電気の消し忘れだと思って入った中には、予想外の人物がいた。
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