第10話盛夏を過ぎた夕立に1

「うーん、なんか空がどんよりしてきたわねえ。」


遠くを見ながら晴美が話す。




「うん、そうねえ。でも私達っていつも曇りの日にここに来るでしょ?天気が悪くなるのって当たり前じゃない?」


美沙が当然のことを当然に答える。






「あれ?なんだろ?」


言うが早いか晴美は駆け出していった。




「あんまり走ると腰に良くないわよ!まだ治りきってないんでしょ?」


美沙の心配をよそに一目散に走っていく晴美。




「あ、あったあ!」


晴美は砂浜から何かを拾いあげてこっちに持ってきた。




「ねえ、これ!見て、瓶よ!しかも中になにか入ってる!」


はしゃぎながら瓶についた砂をよく払い落とす。




「うーん、これは手紙みたいね。なんかロマンチックかも。瓶の中にラブレターが入ってて、それで付き合いはじめるっていう映画あったわよね!」


美沙も瓶をよく覗いては、いろいろな想像をしてるようだ。




「とりあえず、開けて読んでみましょうか」


私はそういって瓶を開けようとした。




「ダメ、これを開けるのはこの瓶を見つけてきた私!


そしてこの手紙を受け取るのも私!


もちろん、手紙の主が外国人のナイスルッキングガイだった場合は、その彼と付き合うのも私よ!」


晴美は早くも手紙の主が外国人だと決め付けている。




「はいはい、それでいいから早く開けてちょうだい。


それよりもあなたねえ、上原君はどうなのよ?もうあきちゃったの?」


先週、あれだけの大事件があったのに、そんなことはもう忘れたかのようなはしゃぎっぷりだ。




「それはそれ、これはこれ、さあ、ナイスルッキングガイが東洋美人的ボブカットの私を待ってるわ!」


そういって晴美は瓶を開け、手紙を取り出した。そしてすぐに手紙を広げ、目を通す。




「あれ、残念?」




「残念って何が?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

くもりくらぶ @abcdic

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る