第9話恋は晴天の霹靂 サクラ前線編8

正直、行広の気持ちはかなり前からなんとなくわかってた。


でも、幼馴染の楽な関係が… 好きだった私…




あ、だめだ。今そんなこと考えてる時間はないわ。


行かないと。




そして私は決戦の場所へ向かったのだった。






赤い木の下には貴史がいて、思ったとおり、数人の女子と男子が遠巻きにしてる。


その中には美沙と晴美の姿もあった。




「はあ、気が重いわ~」




ずいぶん待たせているので昇降口から小走りで赤い木に向かう。




目印の赤い木にたどりつくと貴史のほうから話しかけてきた。


「呼び出してごめん。でもこうしないと君の気持ち、聞けないと思ったから」




「私こそ、ずっと返事返さなくてごめん。」




「返事… 聞かせてくれるかな」


貴史はまっすぐに私を見つめてくる。




その視線をがんばって見つめ返して、私は答えた。


「ごめんなさい。私、貴史君の気持ちには答えられないみたい。」







長い沈黙のあと貴史は重い口調で聞いてきた。


「理由が聞きたいんだけど…」




「理由かあ、理由はまあ、好きな人がいるからかな」


卑怯かもしれないけど、こう言っておけば断れると思って用意した言葉だった。




辺りは静まりかえった。




野球部やサッカー部の掛け声が聞こえてくる。


ふと見ると行広の姿が見えた。




ずっとこっちを見てる。




「ダメって言われて、簡単には諦められないよ。


君のことずっと好きだったんだ。


小島さんの好きな人っていったい誰なの?」


上原君は、簡単に諦めるような気配ではない感じだ。




「私は、私の気持ちは…」


心の中でいろいろと整理する。




そして私は行広を指差して答えた。


「上原君、あそこにいるサッカー部の人見える?


みんな知らないと思うけど、実は私達付き合ってるんだ。


幼稚園のときからの幼馴染でね。ずっと好きなの。


だから… ごめんなさい」




「そっか、わかったよ」


貴史は短く言うとカバンを拾って自転車置き場へ走っていった。




周りの野次馬達は


「ウソー」とか「なんで~」とか「知らなかったあ」とか、思い思いのことを口々にしべっている。




行広は他のサッカー部員に小突かれながらランニングの外周に向かっていった。




「明日から、学校でいろんな噂が飛ぶんだろうなあ」といろいろなことを考えた。


でもまあ、行広とならいろんな噂もまんざわ悪くないかも。と気楽に思えたのだった。

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