第85話
振られたのは私の方なのに、幸坂先生が私よりずっと辛そうな顔をするから私は涙を流す暇さえなかった。
教室では決して見せてくれない幸坂先生の“幸坂昴”の顔を見つめることに夢中だった。
「私じゃ、だめですか。私が幸坂先生の毎日を素敵にしたいって、そう思うこともいけませんか。別に好きになんてなってくれなくてもいいから、もっと幸せそうな顔を見せてください。」
そう言った私の声は、今度は自分でもわかるくらいに震えていた。
人の前では泣かないぞっていつもは気を引き締めているのに、次に私の瞳に映ったのは涙でぼやけた幸坂先生の姿だった。
先生は多分無意識に私の頭に手を伸ばそうとして、すぐにハッとした様子で手を宙に浮かせたまま固まって、それから下ろした。
その動きを見ながら、もう私に触れてくれることはないんだな、とまた悲しくなった。
そりゃそうだよね、元々そうだった。
教師と生徒の距離感なんてそんなものだった。
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