第75話

誰かといる時はあんなに上手に笑えるのに。

楽しいことや胸がときめくことをいくつだって探せるのに。


1人になった途端、私は悲しみや寂しさや、この世界の暗闇にあまりにも無防備だ。


暗くて冷たい場所に取り残されたみたいな感覚に襲われて、どうしようもなく不安になる。


やめて、一人にしないでって涙が滲んでくる。


そんな自分の内側の脆い部分を分かっているから、いつも何か素敵なことを探そうとしていた。


無理にでもキュンを拾い上げなければ、私の世界の頼りない明かりは、すぐに消えてしまうから。



「篠宮?なにやってんの?もう下校時間だぞ。」


私の耳に心地よく響く低い声が、私の世界にまた明かりを灯してくれる。


幸坂先生は、昼間に見た時よりもずっと心配そうな様子で私を見つめていた。

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