第74話

黙々と手を動かしながらも、私の思考は別のところへと飛んでいた。


思えば、今日は散々なことばかりだった。


高校生活最後の文化祭は、途中まではあんなに楽しかったのに。


階段では転げ落ちそうになって本当は泣きたくなるくらい怖かったし、幸坂先生を見つけて嬉しくなった途端に本橋先生が現れて先生をすごく遠い存在に感じたし、みんなで協力して作った暗幕はこうして誰かに破られてしまうし。



全部、そんなに悲観的になることじゃないって、いつもの私なら深く考えずに切り替えられた。


結果的に階段からは落ちずに済んだし、幸坂先生は私なんかの手には届かない人だって最初から分かってて、勝手に好きになったのは私の方だし、この暗幕も私が帰る前に見つけたからこうやって直すことが出来る。



そう、考えられるはずなのに。


今日は私の心は沈んだままで、どこを探してもキュンなんか見つけられそうにない。


私の世界の小さな明かりは、もう私の涙で消えてしまいそうだ。

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