第76話

返事をする代わりに顔を上げると外はもう真っ暗で、校舎内は誰もいないみたいにシンと静まり返っていた。


奈々ちゃんから「了解、気を付けてね。また明日!」という返信が来ていたのにも気付かずにいるうちに、二時間くらいが経っていたみたいだ。



みっともなく泣きそうになっていたのがばれてしまっただろうか、と動揺している私に構わず、幸坂先生は教室に入ってきた。


机を挟んで向かい側に、少し窮屈そうに長い脚を収めて座る。


「なんで一人で残ってんの?他の奴らはどうした?」


幸坂先生はいつもの気だるそうな様子ではなくて、不機嫌そうに鋭い口調でそう訊いてきた。


「あ、えっと。たまたま、破れてるの見つけたから、今日中に直しちゃいたいなって。こんな時間まで、ごめんなさい。」


小さく息を吸ってから、なるべく声が震えないように意識して答えた。

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