第72話

映画の中の「銀河鉄道の夜」の宇宙がここまで広がってるみたいにしたいよね、どの色のスパンコールの組み合わせが綺麗かな、そう話しながら準備期間にクラスのみんなと一緒に作った物だった。


それが、ほんの短い間に無遠慮に破かれてしまった。



忙しい中で作り上げた私たちの作品や、みんなで夏の暑い教室で試行錯誤したあの時間までバラバラにされてしまったような気がして、胸が締め付けられるように痛かった。


悔しいし、悲しい。


奈々ちゃんに「ごめんね、用事思い出しちゃったから先に帰ってて。かっきーと潤君にも謝っておいて!」とメッセージを入れる。



幸い被害にあったのは一枚だけだし、頑張れば私一人でもなんとか直せそうだった。


一緒にこれを作った内装係の女の子たちにも、実行委員として今日の成功を喜んでいた奈々ちゃんにも、こんなことは知らせたくなかった。


こんなに悲しい思いを、みんなに共有してほしくない。

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