第65話

私が絶対来るって分かってるみたいに、余裕そうに上げられた口角にちょっと悔しくなったりもしたけれど、それ以上にその微笑みにときめいてしまって、我ながら単純だなあ、と思いながらまだ先生に向かって話し続けている女子生徒たちの方へ足を動かした。


そう、そちらへ向かったのだけど、私が適当な理由をつけて幸坂先生に声をかける前に、ポケットに入れたままだったその腕を違う人が横から奪っていった。


「幸坂先生、こんなところにいたんですか。もう職員室に他の先生方集まってますよ。」


「本橋先生…。」


幸坂先生は驚いたように横を見てその人の姿を確認すると、次の瞬間にはもう余裕を取り戻していた。


「すみません、もうそんな時間でしたか。」


そして、これ幸いとばかりに幸坂先生に絡んでいた女子生徒二人に何か声をかけて、本橋先生に腕を引かれながらその場を後にした。

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