第63話
授業中とは違って白衣もスーツのジャケットも着ていない、いつもよりラフな格好をした幸坂先生だった。
どんな格好をしていても、私の目にはすぐに幸坂先生を見つけてしまうセンサーでも備わっているのかもしれない。
彼はお世辞にも楽しそうとは言えない顔をして、隣のクラスの前で女子生徒に引き留められていた。
どこかの企画に行こうと誘われているのか、一緒に写真を撮るよう頼まれているのか、そんなところだろう。
今日も人気だなあ、なんておもしろくない気持ちで口を尖らせてしまったけれど、片手をポケットに突っ込んで、いかにも面倒そうな顔で彼女たちの相手をしているにも関わらずぐいぐいと攻める女の子二人組のガッツには感心しそうになった。
そうだよね、私もあのくらいの熱意がないと幸坂先生には立ち向かえない、となぜだか勇ましい気持ちになっていると、あんまりじっと見つめすぎていたからか、幸坂先生が不意にこちらに視線を投げてきた。
ぱちっとお互いにはっきり分かるくらい目が合ってしまって、一人アタフタする私とは対照的に、幸坂先生は何か悪いことを思いついたみたいにニヤリと笑ってみせた。
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