第58話

突然、どんっという衝撃が私の左肩を襲ったのはその時だった。


「すみれっ」


焦ったように奈々ちゃんが私の名前を呼ぶのが聞こえたけれど、私は咄嗟に声も出なかった。


足元を見ながら階段を駆け上がっていたのが良くなかったのかもしれない。


それか、右手に持った綿あめに気をとられていたのだろう。



どちらにしても誰かにぶつかった、と思ったときにはもう私の体は重心を崩していて、手すりを掴もうと伸ばした左手も空を切っただけだった。


頬に微かな風な感じて、これから来るであろう衝撃を想像してぎゅっと目を閉じた瞬間、伸ばしたままだった左手を誰かに強く引かれた。



「あっぶない。すみれちゃん、大丈夫?」


階段の上から、私の手を繋ぎとめてくれたのはかっきーだった。

細い体に似合わない強い力で私の体のバランスを立て直してくれて、そう言いながら顔をのぞき込んできた。

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