第54話
もちろん、今のままでもすっごくかっこいいと思ってますよって言いそうになったけれど、それは全然信じてもらえそうにないので、代わりにさっきのガールズトークの続きをしてみた。
「ちなみに、私は好きな人にはスイートハートって呼ばれたいです。」
「スイートハート?」
奈々ちゃんがサラサラの黒髪を揺らして首を傾げた。
「うん。愛しい人、って小さい頃ママが私のことそう呼んでたの。ママのスイートハートは、すみれとパパだけよって。」
お茶目な笑顔でそう言ったママの顔を脳内で再生しながら、途中からザラザラと苦い砂を飲み込んだみたいな嫌な感覚に襲われた。
すみれと、パパだけ。
ママはあの時、どんな気持ちでそう言ったのだろうか。
私は顔も知らない父親が、ママのスイートハートなのだろうか。それとも。
暗い思考の渦に巻き込まれそうになったのが私の気持ちに鋭い二人に気付かれないように、うまく隠せるように、私はさらに言葉を重ねた。
それはとても短い間だったから、多分笑顔を保てていたと思う。
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