第51話
「失礼します。」
私が場所を案内してあげたのに、奈々ちゃんは私よりも先にドアを開けた。
当たり前のように小さくお辞儀をしてから入室した彼女は、きっと幼い頃からお家できちんと躾けられてきたのだろう。
奈々ちゃんの丁寧な所作の一つひとつに、私は見習うところばかりだ。
「はい、どうぞ。お前たちも夏休みなのに、偉いね。」
幸坂先生はいつもの席に座って、今日はプリントの採点をしているみたいだった。
濃いめのブルーのシャツと紺のスラックスの組み合わせが完璧で、夏でも学校ではラフな格好をしないのが先生らしいと思った。
「幸坂先生も、化学の講習持ってますよね。お疲れ様です。」
「そうそう。生徒が勉強熱心なのは嬉しいけど、俺の仕事が増えるわ。」
奈々ちゃんは幸坂先生の講習を取っているらしくて、それはもちろん私には必要のないものなのに、夏期講習の予定表が配られた時その日程をチェックしたりしてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます