第50話
奈々ちゃんと私は今日は午後の講習がない日だったので、学校にいても暑いし帰ろう、ということになった。
下駄箱まで着た時、奈々ちゃんが何かを思い出したようにあ、と声を上げた。
「今日過去問借りようと思ってたんだった。すみれ、進路指導室ってどこか知ってる?」
奈々ちゃんの口から出てきたその名前に、私は過剰に反応しそうになる心をなんとか落ち着けて、「うん、知ってるよ。一緒に行こっか。」と答えた。
私が動揺してしまった理由は、進路指導室に行ったことや、幸坂先生を見つめる時の胸のざわめきを、一番の友達である奈々ちゃんに話していなかったからだけではない。
今日は、金曜日だ。
初めてあの部屋を訪れた日以来、私は頭のどこかで金曜日という日に特別な意味を見出している。
夏休みにも幸坂先生が進路指導室にいるかどうかは分からないけれど、しばらく顔を見ていなかった先生に会えるかも、と思ってしまったことはやっぱり奈々ちゃんには言えなかった。
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