第49話

かっきーはそんな奈々ちゃんの意見にも、どこ吹く風で飄々として答える。


「でも俺、別れた子たちと今でも仲良いよ。」


「そのせいで篠宮さんが嫌な思いすることになったら、意味ないだろ。」


周りに無関心なようで、実はとても優しい潤君は私のことまで気にかけてくれるみたいだ。


静かに、諭すような口調で言った潤君に、かっきーは少しだけむっとした顔を見せた。


「俺だってすみれちゃんに迷惑かけたいわけじゃないよ。すみれちゃんが嫌だって言うなら、あの子たちとはもう話さなくてもいい。」


なんだか話が大きくなってしまったことに驚いて、私は慌ててかっきーの持っていた下敷きの、反対側の端を両手で掴んだ。


二人で下敷きを引っ張り合うような恰好になって、はた目に見たら結構おかしな光景だったと思う。


「ごめん、私の言い方が悪かったよね。むしろ、私もかっきーのお陰でそれまで知らなかった子と話せることもあって、ラッキーとか思ってたり。」


へらり、と笑ってみせるとかっきーは険しかった顔を緩めてくれた。

それにほっとしていると、なぜか奈々ちゃんには今度は小さくため息を吐かれた。


「…お人良しのお花畑。」


それを聞いたかっきーがおかしそうに笑う。


さっきまでのちょっと苛立ったような顔はなんだったんだ、と思ったけれど、なんだかみんなが笑っていたのでもうそれだけでいいや、とあまり気にしないことにした。


「俺の本命が見つからないのはすみれちゃんのせいかもね。」


「え?なに?」


彼らしくなく、歯切れ悪くぼそっと呟かれた言葉を上手く聞き取れなくて首を傾げたけれど、「なんでもない」と言われただけだった。


私は1コマ50分の夏期講習よりも、みんなとの10分のおしゃべりのために夏休みも学校に来ているのかもしれない、と思った。

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