第33話

三人一組である私たちの班のもう一人のメンバー、美月ちゃんは大体静かにニコニコと笑って私たちの話を聞いていてくれる。


そのため私たちの声ばかりが目立つみたいで、周りの班の友達からすみれとかっきー二人で実験やってるのかと思った、と言われることもしょっちゅうだ。


でも、この中で一番働き者で有能なのは、間違いなく美月ちゃんであると私は確信している。


私とかっきーがバタバタと準備をしている間にも、彼女は黙ってテキパキと実験を進めてくれるから。


あまりにも戦力になれない自分に、申し訳なさで肩身の狭い思いになる。


「待ってかっきー、次どうすればいいんだっけ?塩酸?塩酸ってこのまま入れていいの?」


「塩酸はアルミが入ってる方の試験管って言ってたでしょ。先生の説明中なに聞いてたの?」


「説明中に話しかけてきたのかっきーの方じゃん!私静かにしてって言ったのに、昨日のドラマの話してきたよね!?それなのにどうして私だけこんなに分かってないの。」


どこにぶつけて良いのか分からない私の嘆きを聞いてケラケラと笑っている彼は、こうなることが分かった上で私に話しかけてきたに違いない。

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