4.化学室にはホワイトボード

第32話

いつもは教室で座って受けている化学の授業が、化学室での実験の日は窓から外を眺めている暇なんてない。


「すみれちゃん、ガスバーナーの炎大きすぎだって!気を付けて、俺の手が燃える。」


「わあ、ごめんね。…これくらいかな?」


今日も今日とてかっきーと隣の席で、しかも同じ班で実験に取り組んでいる私は、少し大きめの白衣の袖をまくってガスバーナーの調節ねじを操作する。


すぐに小さくなるから、という販売員のおばさんの言葉を信じて買ったワンサイズ上の白衣の丈は、いつまでも私の身長にフィットしてくれないままだ。



マッチを使うのが怖いとビビっている私に、かっきーはなんだかんだ毎回その役割を引き受けてくれる。


かっきーが火のついたマッチを、私から遠ざけるように水の入った缶の中へ捨てた。


「試験管と金属片、持ってきたよー」


「美月ちゃんありがとう。」

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