第25話

「まあ次のテストは来月だし、とりあえず今は気を抜いてもいいんじゃない?」


奈々ちゃんは6月の湿気をものともしない、ツヤツヤの黒髪を今日はポニーテールにしていた。


それがさらり、と揺れたと思ったら、後ろからやって来た潤君が彼女の肩をとんとんと叩いたからだった。


「奈々、今日部活少し遅れるからみんなに言っておいて。」


「わかった。」


奈々ちゃんは剣道部の頼れる副部長だけど、潤君はなんと部長さんなのだ。


二人は部活もクラスも同じだから必然的に一緒にいる時間が長くて、いつも息の合った会話をしている。


普段物静かな彼が竹刀を握ったらどんな感じなのか、私は気になっているのだけど「別に普段と変わらないと思うけど」と奈々ちゃんはクールに言っていた。




ザアザアと窓を打つ雨音が、私の左側を覆っている。


最近はこの梅雨のせいで、せっかくの窓際の席なのに窓を開けられないし、授業中に外を眺めてみてもグレーの空が広がっているだけだ。


雨は気持ちまで暗くなるから嫌だ。目を閉じたら、暗い気持ちとともに私の体ごと深くて冷たいところに沈んでしまいそう。



まだまだ止む気配のない雨を見つめて、そんなことを考えた。

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