第21話

最近一番のキュンを三人に発表しようかな、と考えついて最近の出来事を色々思い返していたら、私の記憶の中で最も色濃くときめきを主張したのは、幸坂先生の耳に心地いい低音の笑い声と、彼が手渡してくれたメロンパンだった。


そのことに気付いてしまった自分に驚いて、動揺して、まだこのキュンに名前を付けるのはやめておこうと思った。

多分、私にはまだ早い。


だって、相手はあの幸坂先生だ。


緩いウェーブのかかった黒髪は色気があるし、意外と柔らかく笑う切れ長の瞳からは目が離せなくなるけれど、彼は教師で私は生徒だ。



きっと、あの美しい顔の魅力にあてられて、私の脳もエラーを起こしてしまっただけだろう。


何より、現実主義で面倒なことが嫌いな幸坂先生は最もキュンから縁遠い人間にすら思える。



こんなことを言ったら、彼はきっと「何言ってんの、篠宮。」ってちょっと馬鹿にしたように笑うだろう。

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