第20話

「そうなの。だから、なるべくたくさんキュンを見つけたいなって。そういう、小さなキラキラも見逃さずに生きていたい。」


多分、私の毎日には私の手のひらからすり抜けてしまっているたくさんのキュンがある。


朝の満員電車に揺られたり、難しい数学の問題集とにらめっこしているとキュンを探すことすら放棄してしまう時もあるけれど、眩しい光の中では霞んでしまうような煌めきも、ちゃんと拾ってあげたい。


私はそうやって、油断すると消えてしまいそうな自分の世界の明かりを保っている。

そうすることでしか、保っていられないのかもしれない。


「それって、単純なようで意外と難しいかも。」


ぽつりとつぶやいた潤君の声は優しくて、思った通りその顔は緩く微笑んでいた。


あまり口数の多くない彼の言葉には、その分の重みがある。


だから潤君が私に向けて届けてくれた言葉を、私は全て大切にしている。

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