第15話
私は一階の購買前に設置された自販機に向かうために片手にお財布を持ったまま、階段をさっきよりもややゆっくりと駆け下りた。
私の学校には食堂というものがないので、昼休みにはみんな購買で売っているパンやおにぎり、もしくは家から持参したお弁当を食べている。
自動販売機の前に着いた私はそこに並ぶ飲み物のラインナップが変わってないのを確認して、いつもと同じピンク色のパッケージの下のボタンを押した。
四階の教室に戻ると奈々ちゃんが自分の席からイスだけを持って来て、私の机の上にお弁当を広げていた。
「お帰り、すみれ。イチゴオレ買えた?」
「ばっちりだよー。これがないとお昼ご飯が締まらない。」
「それ飲んでる人すみれちゃんしか見たことないけどね。」
私の隣の席のかっきーが昆布お握りをもぐもぐと食べながら、きゅるんとした目でそう言ってきた。
男の子なのにふさふさな睫毛を少しでいいから分けてほしいと、いつも思ってしまう。
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