第14話

多分そんなに堂々と言うことではない。


それに先生が焦っている姿なんて見たことないから、すごく急いでいてもせいぜい早歩き程度だろう。


この人が息を切らして全力で走ってる姿というのが想像できない。


この前の授業も「ごめん、時計見てなかったわー」とか言って、5分くらい遅れて教室に現れたのに飄々としていた。


「先生、いつも金曜日にあの部屋にいるんですか?」


「進路指導室のこと?うん、大体いると思うよ。なんか困ったらまたおいで。そんなに面倒くさい相談じゃなかったら聞いてやるから。」


「面倒くさい相談こそ生徒が悩んでることだと思うんですけども。」


またおいで、と言ったわりにいつも通りのドライな対応だった。



幸坂先生はこんな所で私と世間話をするつもりはないらしく、「急ぐのはいいけど転ぶなよ。」と言って階段を上がっていった。


最後に軽く私の髪の毛をくしゃくしゃ、と乱していったから、私の心まで乱されてしまいそうだった。

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