第6話

このままでいいのかなと一瞬迷ったけれど、まあいっか、と結局いつもの結論にたどり着いた私は、大学案内の資料をちょっと覗いてみることにした。


部屋の中央を陣取る大きな机の反対側の端の方に勝手にスクールバックを置いたところで、後ろから耳に残る低い声が降ってきた。


「あれ、お客さん?珍しいじゃん、こんにちは。」


「わあ、こんにちは。って幸坂先生。何してるんですか、こんなところで。」


「何って、俺じつは進路指導担当だから。ほとんど名前だけなんだけど。金曜日はこの部屋にいなきゃいけないわけ。」


気だるげな態度で言ったその人は、この学校の化学教師でイケメンと名高い幸坂先生だった。


いや、進路担当がそんなやる気なさげでいいのか。将来に悩む純粋な生徒たちに悪影響じゃないのか、と思ったけれどそれは黙っておいた。

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