エルフ-上-

「ガッハッハ」


 そう叫ぶのは盗賊のボスである。

 体のガタイはガッチリしており、片手にはナタを持っており非常に臭い。

 盗賊のボスは薄暗い住処の端に運んだ満達に近づき、ニヤニヤと笑いながら「お貴族のボンボンが護衛もつけずに移動するからそうなるんだよ!」と言った。


-こいつ、俺達のこと貴族だと持ってんのか……まぁ豪華な馬車に乗ってたから、そう思うのも仕方ないか-


 そう満は思っていると、盗賊のボスが急に足をあげ満を踏みつけてきた。


「ほら!早く起きろよッ!」


 そうず太い声で叫んだところで、満は起きたふりをした。

 すると、満の顔をぶん殴りゲスに笑いながら「お前みたいな貴族を欲しがってる闇商人がいるからよ。そいつに売ってやるよ!」と言った。

 満は素晴らしい演技で「嫌だぁぁぁあぁ」と情けなく泣いた。

 格上の人が格下の人に命乞いしているその様子が面白かったのか知らないけれど、リュファスが少し小さな声で笑った。


「よしじゃあ、お前らの身ぐるみ剥がさせてもらうぞ」


 そう言いながら、満に手を出そうとした瞬間満は嫌だったのか、その盗賊のボスを殴った。

 盗賊のボスを殴った瞬間ソニックブームのような衝撃波が放たれ、住処のガラスやワイン瓶などは全て割れ、盗賊のボスが悶絶していた。


「さすがに体触られるのは嫌だなぁ」


 そう呑気なことを言っている満を見上げて、悔しそうな顔で盗賊のボスが「お、お前、騙していたのか……」と言い、そのまま気絶した

 満はジンクスとリュファスに「よし、行くぞ!」と声をかけ盗賊の住処から容易に脱出した。


「よーし、また馬車に乗るかぁ」


「満さん、馬車何処かに行っちゃったみたいです」


 満が盗賊の住処から出て引き続き馬車に乗ろうとしたら、馬車の御者は満達がもう死んだと思ったのか、どこかに消えていた。

 そのため、満たちはエルフの国まで歩いていくことにした。


「なぁジンクス。いっそのこと瞬間移動かこの圧倒的スピードで走るか?」


「まぁそんな焦らずにゆっくりいきましょうよ」


 そう言い、無限に広がってそうな草原を歩くことにした。

 満が、草原は山などが何一つ無いので、風が強く結構涼しいなぁと思っていると、ジンクスが草原の先を指差して「あれ……なんですか?」と言った。


満は岩のようなものが見えたので、「岩かな?」と言ったら、リュファスが何か近づいておるのじゃと言い、ドドドドという音とともに大きな闘牛が満達のほうに突進しときた。


「あれ、牛じゃね?」


「そうですのじゃ」


「なんで俺たち狙ってるんだろ?」


 そう考えてるうちに闘牛がこちらに近づいてきた。

 そして、闘牛のせいで見えなかったのだが、実は闘牛は満達を狙っているのではなく、後方から来るレッドドラゴンに追われておたのだ。


「グゴォォォォ」


 そう闘牛が叫び、その直後レッドドラゴンのブレスにより焼き尽くされた。

 灰だけになった闘牛の灰は涼しい風によって、はるか彼方へと散っていった。


「どうする?」


 そう満がジンクスに問いかけた。

 すると、ジンクスは「私が片付けましょう」と言った。

 実はジンクスは満とトレーニングという名のモンスター狩りを行ったおかげで、レベルが爆速成長していた。

 ジンクスはスキル[超空機動戦闘術],スキル[ステータス超上昇],スキル[極熱戦闘状態],スキル[超人身体状態]によりレベルはゆうにSランク……もしくはZランクにすらも届きうるのである。

 そんなジンクスからしたらレッドドラゴンなど赤子の手をひねるもの同然である。


「では駆除してきます」


 そうジンクスが良い、クラウチングスタートの構えを取った瞬間、空中には万…億…兆…そして1京にも及ぶ螺旋を描いた。

 その螺旋は昼間なのに夜に見た花火のような明るさであり、綺麗であった。

 そして、螺旋が消えた後にボトッ…ボトッ…とレッドドラゴンの肉片が落ちてきた。


「いやーー綺麗なものを作るなぁ」


 そう満はいった後に、隣にジンクスがシュタッという音を立てながら着陸した。

 そして、ジンクスは余裕そうな顔で「余裕でしたね」と言った。


「ま、とりあえずエルフの森まで歩いていくぞ」


 そう満が言いエルフの森へ向かった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


  エルフの森に到着し、入っていった途端に足元に弓矢のようなものが突き刺さる。


「おいッそこのお前ら何しにここに来たッッッ!」


 そう大声で言ったのは、大きな木に乗っている葉や皮などで作った服を身に着け、耳が尖ったエルフのような人である。


「いや、別に怪しいものじゃないよ。ここで一晩過ごした後にここから出るただの旅人だよ」


「嘘を言うな!最近、ここらへんで盗賊が移り住みだして、エルファリアに旅人として入る込みエルフを誘拐する事件が多発しているんだ!お前らも一日しか過ごさないことからエルフを誘拐するつもりだろ!」


 満はテレパシーでリュファスに「もしかして、エルフ以外は入れないのって最近できた?」と聞いた。

 すると、満が思った通り「はい、そうですのじゃ」という返答が返ってきた。


「待て、じゃあ信用できないのならば私の使い魔に森羅の守り手リュファスがいるから、それで信用してくれッ」


「嘘を言うな!リュファス様がお前らなんかについていくわけないだろ!じゃあ、リュファス様しか持っていない太古のエルフキングがリュファス様に渡したとされるペンダントを見せてみろ!」


 満はテレパシーを使ってリュファスに「お前なんかペンダントとかある?」と聞いたところ、あるらしくそれをリュファスは取り出した。

 その取り出されたペンダントを受け取り俺はエルフのほうに掲げた。


「ッッッ!?!?……それは本物か??偽物じゃないだろうな」


「じゃあこっちに来て確認してごらん?」


 そう満は言いながら招き猫の手のようにエルフにこっちに来いというメッセージを送った。


 すると、エルフはこっちに来て物珍しそうにペンダントを見た後に「リュファス様はどこにいるのだ!」と興奮しながら聞いてきた。


「リュファスは俺の隣にいる人だよ?」


「なにッ嘘を言うでない!」


 満は少しムカッとなったが、落ち着いてこのエルフにリュファスのステータス画面を見せた。

 見た瞬間顎が外れそうなぐらい口を開け停止しているエルフに向かって「な?では入らせてもらう」と堂々と言って、そのエルフを放置してエルファリアに入っていった。


 エルファリアの中には沢山のエルフがいた。

 ただ人間はいないためものすごい場違い感を感じながらも、宿へ移動していたら、満の目の前に大きな影が見えた。

 その大きな影はエルフの騎士団の影であり、女性でもここまでデカくなれるんだと思う程、がっちりした体格、190cmは優に超えるであろう身長を持っていた。


「おい、なんでここに人間がいるんだ?門番は何をしているんだよ……」


 そう騎士団の騎士団長らしきエルフがため息をつくと、後ろから追いかけるように走ってきたさっきのエルフがいた。


「騎士団長様!彼はリュファス様のご主人様です!きちんと太古のネックレスとステータスも見て確信しました!」


 そうエルフが叫ぶと、騎士団長は冷酷的な目でそのエルフを睨んだ


「お前バカか?最近はそういう偽物を作れる盗賊もいるし、ステータスは偽造系スキルを持っているかもしれないだろ?」


「ま、まぁそうですね……」


「じゃあこれは、戦って確かめるしかないなぁ」


 そう騎士団長らしきエルフの人が言い、ここでは戦闘に被害が出るかもしれないので、少し離れた太古の人間が作った闘技場にて決闘をすることになった。


「では偽リュファス……私に圧勝できるよな?」


 そう舐め腐った目で見てきて、挑発してきた。

 天上五王として、初めての挑発という行為を受けたリュファスは、少しキレたのか思いっきり騎士団長の方に飛んでいったのだ。

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