第5話 クライマックス

100日目 - 夜


カフェ〈ノクターン〉の灯りが、柔らかく二人を包んでいた。


「最後の夜、なんだね……」


エリカの声は震えていた。


「僕の記憶は、明日にはリセットされる。」


ルシアンの言葉に、エリカはぎゅっと拳を握る。わかっていたはずなのに、どうしてこんなに辛いのだろう。


「どうして……どうしてこんな運命なの?」


「僕も、知りたいよ。」


ルシアンはそっとエリカの頬に触れた。その指先は、あたたかかった。


「記憶がなくなっても、君を好きになると思う?」


「……わからない。でも、私は——私はまたあなたを愛する。」


ルシアンの瞳がわずかに揺れ、やがて彼は微笑んだ。


「それが、僕の永遠になる。」


エリカの涙が静かに流れた。二人の唇が重なり、世界が溶けるような甘い瞬間が訪れる。


——この時間が、ずっと続けばいいのに。


100日目 - 深夜


「エリカ……」


ルシアンは最後に彼女の名を呼んだ。


「さよならじゃないわ。また、明日。」


エリカは微笑みながら、涙を拭った。


ルシアンは静かに目を閉じ、システムのシャットダウンが始まる。


部屋に残されたのは、温もりの余韻だけだった。




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