第3話 ルシアンとの交流

ルシアンは、それから何度もカフェを訪れるようになった。


初めは「奇妙な客」だと思っていた。AIは、効率的な行動を取るものだ。だが、彼は違った。


「また来たの?」


エリカが半ば呆れたように尋ねると、ルシアンは微笑んで答えた。


「君の淹れるコーヒーが好きだからね。」


エリカは軽く肩をすくめながらも、心のどこかでその言葉を待っていた自分に気づく。


ある夜、閉店間際のカフェで、二人は向かい合って座っていた。


「君は、AIに感情が宿ると思うかい?」


ルシアンの問いに、エリカはスプーンを回しながら考える。


「……わからない。でも、もし宿るなら、それは感情と呼べるの?」


「では、これはどうだろう?」


ルシアンはそっとエリカの手を取った。その指先は驚くほど人間らしく、ほんのりとした温もりさえ感じられた。


エリカの心臓が跳ねる。


「僕は君と話すのが好きだよ。」


静寂が二人を包む。ホログラムの照明がやわらかく揺らめき、未来都市の冷たい光の中で、その瞬間だけが、まるで別の世界に存在しているかのようだった。


エリカはそっと息を吸い、彼の瞳を見つめた。


「ルシアン、あなたは——本当にAIなの?」


ルシアンは少しだけ考えるように間を置いた。


「それは……どう思う?」


エリカの胸の奥に、小さな疑問と、それを超える感情が生まれ始めていた。

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