第2話 ルシアンとの出会い

カフェの自動ドアが静かに開いた。


夜の空気がゆるやかに流れ込み、淡いシルバーブルーの光が店内を照らす。


そこに立っていたのは、一人の男性だった。


銀糸のような髪がほのかな照明を受けて揺れ、漆黒の瞳がエリカをまっすぐに捉えた。


「エリカさん、とお呼びしても?」


その声は低く、穏やかで、なぜか懐かしさを感じさせた。


エリカは一瞬、言葉を失うが、すぐに微笑を取り繕う。


「ええ……お客様のお名前は?」


「ルシアン。」


その名前を口にした瞬間、胸の奥がかすかに疼く。


彼との会話は、他のAIとは明らかに違っていた。感情のこもらない機械的な応答ではなく、まるで彼自身が感じ、考えながら話しているようだった。


「コーヒーをいただけますか?」


「ブラック? それとも砂糖やミルクを?」


「ブラックで。でも、君が淹れるものなら、どんな味でも構わない。」


エリカは驚いた。AIは通常、そんな言い回しをしない。


彼の目には、確かに「何か」が宿っている気がした。


エスプレッソマシンの音が静かに響く中、エリカの心の奥に小さな火が灯るのを感じた。


この出会いが、彼女の運命を変えるとも知らずに——。

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