第6話 艦隊戦術
手に入れた巡洋艦にはオイハギ、駆逐艦2隻にはヒタクリとセットウという名前を付け、それぞれの乗組員を募集した。
ナガツキ軍の艦隊は既に戦艦1、巡洋艦1、駆逐艦5というなかなかの戦力に膨れ上がっている。
更には結界ユニットをそれぞれ三倍にしているので、突撃しても壊される心配も少ないという俺達におあつらえ向きな仕様となったのだ。
これは宙賊狩りも捗るというもの。
「ツバキ様。ドロッボ子爵から通信が入っております」
「ドロッボ子爵から? 一体何の用だろうな」
ドロッボ子爵はナガツキ領の隣の星系を治める貴族家だ。かつてはナガツキ家の傘下であったらしいが、今ではうちの方が格下だ。
時々意地悪な通信をしてくるので、俺の中の嫌いな貴族ランキングベスト3に毎年ランクインを果たしている。
「もしもし。ツバキだよ」
『ふん。出るのが遅いわ。貧乏男爵の分際で子爵を待たせるんじゃない』
「あ、用事ないなら切るね。そんじゃ」
『待たんか! 貴様、相変わらず舐めた口聞いてくれるじゃないか。親はどういう教育をしてきたんだ?』
「もう疲れたから切って良い?」
こいつ、前フリが長いんだよね。
嫌いな奴だからってタメ口で話すとすぐ怒るし。
『待て! そちらの星系に向かった王国軍の軍艦が消息を絶ったらしい。最近宙賊狩りもしているそうじゃないか。お前が怪しいのでとりあえず出頭しろ』
何言ってんのこいつ?
軍艦も宙賊も俺が根こそぎ奪ったのは事実だけど、確認もしないで出頭しろは酷くない?
「知らんて。自分で調べれば?」
『ふん。軍艦の1隻もない貧乏男爵家だと思い、今までは手加減してやっていたが宙賊を狩れる程度の力を得たなら容赦はしない。今から戦争だ。潰す理由としては十分過ぎる』
不十分でしょ。何言ってんの。
「証拠ないじゃん」
『そんなものはでっち上げれば良い。とにかく首を洗って待っていろ! 良いな!?』
「首を洗いたいからボディーソープを恵んでくれ」
乞食ムーブをかましてみたところ、ブチッと通信を切られてしまった。
少し冗談を言っただけだというのに……。
「ツバキ様。凄い煽りでしたね」
「俺はあいつが嫌いだ」
ドロッボ子爵には王家に尻尾を振る犬だと散々言われてきた。
俺だって尻尾があったら振りたいのに、尻尾がないから振れないんだよ。それを分かっているくせに犬だなんて言うからムカつくのだ。
「それよりも戦争だなんて大丈夫なのですか?」
「大丈夫。今の俺には新生ナガツキ軍がついている」
「ちょっと前まで全員農民でしたよね?」
農民だって良いじゃないか。
「仕方ないから戦争の準備をしよう」
「は、はい」
何を不安そうな顔してるんだオーリエは。
「ツバキ君は馬鹿なの?」
馬鹿とはなんだ馬鹿とは。
「ドロッボ子爵が因縁つけてきて勝手に怒りだしたんだ」
「確かに相手が因縁つけてきたんだろうけど、相当な割合でツバキ君の煽りが開戦のきっかけだよね?」
かもしれん。
「良いじゃないか。この際だからドロッボ子爵の軍艦を貰っておこう」
「データによると、ドロッボ子爵はこちらの4倍以上の戦力。幸い私がいるから負ける事はないけど、ツバキ君は反省した方が良いねマジで」
キミドリは何を言っているのだろうか?
「今回の戦いでキミドリに兵器なんて使わせる気はないぞ」
戦艦バトルギャラクシスは技術レベルが現行艦と隔絶しているらしい。
そんな艦の兵器を使えば軍艦が爆散してしまう。無傷で捕獲したいのだからバトルギャラクシスに兵器なんて撃たせるはずもない。
「兵器使わないで勝てるはずないじゃん!?」
「我に秘策あり」
「やっぱ馬鹿なの?」
「うるさい。俺の秘策を聞きもしないで否定するんじゃないよ」
やいのやいのとうるさいキミドリを説得し、どうにか俺の秘策で戦う事を了承させる。
最悪俺が負けたらナガツキ家など放っておいてどこへなりとも逃げれば良いと言ったところ、キミドリは「本当に負けたら逃げるからね?」と言っているあたりがまたなんとも人間くさい。
お前、本当は管理AIじゃないだろ。
俺は秘策を実行する為に、領民にボーナスあげるからおいでと言って勧誘しまくった。
領民たちはボーナスを棒に付いたナスの事だと勘違いしていたようだが、金をやるのだから文句ないだろう。
集まった領民を駆逐艦に40人、巡洋艦に120人と、明らかに艦の運用人数をオーバーした数詰め込んでドロッボ子爵の艦隊を迎え撃つ。
駆逐艦5隻と巡洋艦1隻は心なしか動きが重いように見えるが、宇宙空間に重さとかないので多分気のせいだろう。
食糧が持たないので、ドロッボ子爵がこちらの星系に到着してから出撃するという超絶ギリギリのタイミングで攻勢をかける事になってしまったがまぁ良い。
ちなみに戦艦バトルギャラクシスには100人しか乗せていない。俺はパーソナルスペースとか大事にするタイプだから。
「こんな武装貧弱艦隊でどうしようって言うのさ。結界ユニットだけは優秀だから簡単にはやられないんだろうけど」
「黙って見てろキミドリ」
そろそろ戦場だ。我が艦隊の初戦で初勝利を飾る為の舞台に到着するのだ。
「ツバキ様。ドロッボ子爵より通信が入っています」
「繋いでくれ」
オーリエに指示し、通信を繋いでもらう。
『おい貧乏男爵。貴様、やはり王国軍の軍艦を奪っていたな? あれは俺の金蔓だぞ』
金蔓? あぁ。臨検と称して艦を奪う仕事でもさせていたという事か。
「違うよ? あれは拾ったんだよ?」
『ここにきてまだ舐めた口を叩くのか? そのボロボロの戦艦を頼りにしているのかもしれんが、そんなオンボロで何が出来る』
「ところでボディーソープ持って来た? 首洗っとこうとしたけど洗えなかったんだよね」
俺がそう発言した途端、ドロッボ子爵は顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。
『もう許さん! 手加減してやろうと思っていたが宇宙の塵にしてくれるわっ!』
怒ったドロッボ子爵がブツンと通信を切ってしまった。
全軍で出撃してきてるんだから、そもそも手加減するつもりなかったじゃん。
「怒ってたな」
「あれで怒らない人の方が珍しいと思います」
「で? どうするのさ」
「勿論やる事は決まっている」
ナガツキ家に古来より伝わりし必勝の戦術を披露する時が来たな。
俺は腕を振り上げた。
「ツバキ=ナガツキが告げる。全艦…………突撃」
サッと上げた腕を振り降ろすと同時に、ナガツキ艦隊が全軍で突撃していった。
敵艦からは雨あられのように魔導ビームが撃ち出されているが、ナガツキ艦隊は通常の三倍もの結界ユニットを搭載している。
そんな豆鉄砲なんて効かんのだよ。
猛スピードで敵艦に突撃していく味方艦には時々ミサイルなども着弾している。それでもスピードを緩めず突進していく様はまるで猪だ。
ナガツキ戦術突撃戦法の極意は猪と見たり!!
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