第7話 独り言
「あのさ……宇宙空間のあちこちで人が艦から飛び出しているように見えるんだけど?」
「俺がそのように指示した」
我が軍は敵艦に体当たりをしては味方艦から人が宇宙空間に飛び出し、敵艦にダイナミックお邪魔しますを敢行していた。
駆逐艦に対して5人が取り付いて中に侵入しては奪い取る。そして新たな獲物を見つけてはまた体当たりをして5人が取り付き奪い取る。
巡洋艦や重巡洋艦に対してはもっと大人数で同様の事が行われ、敵軍の数は減る一方で我が軍の戦力はどんどん増えていく。
各味方艦に人を詰め込みまくったのはこの為だ。皆俺が予め指示していた通りに動けているな。偉いぞ皆。
「敵艦を奪った者から順に全速力で戦場を離脱せよ」
奪った敵艦は結界ユニットが標準仕様だから壊される可能性あるしね。
せっかく奪ってもすぐに壊されてはたまらない。借金返済の為には駆逐艦1隻たりとも無駄には出来ないのだ。
「戦果報告。駆逐艦13、巡洋艦1、重巡洋艦1を捕獲しました」
「大漁大漁」
うんうん。流石はドロッボ子爵だ。悪い事してたくさん貯め込んで軍拡してたな?
頑張って集めたであろうこの艦隊は俺が有効に使ってやろう。
「俺達もそろそろ出ようか。キミドリ、あの戦艦に向けて突撃だ」
「……うん」
何故か渋い顔をしているキミドリ。
俺のサクセスストーリーが気に入らないのだろうか?
「さて、我らはこの戦艦を奪取する。皆俺に続け」
戦艦バトルギャラクシスに乗せた領民たちを引き連れ、敵戦艦にダイナミックお邪魔しますを敢行した。
キミドリは「本当に何やってんの!? 死ぬよ!!」と言っていたがうるさい。
その程度で死ぬような奴は我が領にはいないのだ。
「ドロッボ子爵はどこかな?」
「領主様。敵兵をブッ叩いたら指令室にいるとかなんとか吐きましたぜ」
「ご苦労」
指令室がどこか分からんな。でも格好悪いから領民の前で知らないとも言えない。
俺達はしらみつぶしに探し、途中で見つけた積荷をボーナスだと言って領民に配り、なんとか指令室へと辿り着いた。
戦艦は広くて道に迷うね。
「貴様……領民を宇宙空間に生身で放り出すとは人の心が無いのか!?」
「お、ドロッボ子爵じゃん。何言ってんの?」
「よくも味方を宇宙空間に放り出せるなと言っている!」
息止めてれば何とかなるじゃん。
病弱な人とうちの領民を一緒にしないで欲しい。
「なぁ。あいつ、何言ってるんだ?」
「さぁ? 俺も良く分かりませんぜ領主様」
「だよな」
むしろ人の艦を臨検と称して奪い取る方が人の心無いじゃん。
「くっ! お前の頭がおかしいのは知っていたが、まさかここまでとは…………死ねっ!!」
「あちっ」
魔導銃なんて撃ってくるなよな。
直撃すると熱いんだから。
「バ、バケモノ……」
「失礼な。臨検と称して人様の艦を奪い取るお前の心の方が余程バケモノだ。大人しくお縄につけ」
「負けを…………認める」
ドロッボ子爵は観念したようで、大人しくその場に座り込んでしまった。流石は古来よりナガツキ家に伝わる突撃戦法だ。
戦争なんてした事のない俺でも勝てたぞ。
「流石領主様! 格好良いぜ!」
「だろ?」
これで戦艦は奪い取れたな。後は…………。
『ツバキ君、味方が戦場にいる敵艦を全て奪取したよ。頭おかしいんじゃない?』
「おっと、そうツンツンするなよな? 無事勝てただろ?」
ふっ。キミドリも俺の格好良さにツンデレを発揮してしまったようだ。管理AIさえも惚れさせる自分が恐いぜ。
この調子だと、可愛くてごめんねな王女様が求婚してくるかもしれない。
え? そうなったらどうしよう。
「と言う事で戦争は終わった。ドロッボ子爵は賠償金を支払うように」
「え?」
「え? じゃないって。賠償金だよ賠償金。戦争に負けたら賠償金。焼肉焼いても家焼くな。これ、宇宙の真理よ?」
まさか賠償金という言葉を知らないとか言うんじゃないだろうな。
「おいくらくらいでしょうか?」
揉み手をしながら下からくるドロッボ子爵。今までの態度を知っているだけに気持ち悪いな。
まぁ、払ってもらえるなら何でも良いか。
「1568京9509兆9885億913万リウム」
「あるはずないだろ!? 馬鹿かお前は!!」
「だよね」
やっぱ無理か。王家でも支払い切れずに潰れる借金だもんね。
「今すぐ支払えば5京リウムと大変お得になっております」
「5京…………領地内の領民も星も含めた全てを売却してギリギリ届くかどうかだ。だがそれだけはどうか勘弁して欲しい」
「仕方ないか。俺にも人の心はある」
敵対したとはいえ、領民の資産まで売るのは可哀想だ。
てかそこまでやったら法的にもマズいかもしれないし。
「どれくらいなら無理なく払える?」
「……800兆リウムまでなら」
ふむ。
「じゃあ1000兆リウムで勘弁してやろう」
「人の心はどうした?」
「家や家財も売ればなんとかなるだろ? 大丈夫だ。素寒貧になったら畑を素手で耕せば良い」
「素手で畑を……? 余程俺に対して恨みがあるのだな」
「いや、恨みとかじゃなくて純粋なアドバイスなんだけど」
ドロッボ子爵は絶望した顔で俯いている。
金が無くなったくらいで絶望してたら生きていけないよ?
「耕すのは手伝ってやろう」
「耕すのは確定なのか」
知らん。お前の資産状況次第だろそんなの。
中年の男がいくら落ち込んでいても俺は優しくしないぞ。
「そう言えば独り言だが……うちの娘は大層可愛らしくてな」
「何だと?」
「娘を差し出す代わりに5兆リウムだけまけてくれないだろうか?」
成る程。なんてズルい独り言なんだ。
俺が貧乏男爵で結婚相手が見つからないであろう事を見越しての狼藉だな?
「俺も独り言だが、可愛らしい娘さんがいれば5兆リウムくらい忘れてしまうかもしれない」
思わず独り言が口から出てしまった。独り言って恐いな。
「契約成立だ」
「契約? 違うだろ。ドロッボ子爵の娘さんが俺の所に遊びに来たいと言っている。同時に俺がドロッボ子爵から5兆リウムだけ取り立てるのを永遠に忘れる。それだけの話だぞ」
「そうだったそうだった。歳を取ると見当識が怪しくなるな」
「ははは。素手で畑を耕してみてはどうだ? 健康に良いぞ」
「それはやめておこう」
残念だ。うちに来る娘さんのパパさんには健康でいてもらおうと思っただけなのだが。
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