第5話 宙賊アジト


 俺達は今アステロイドベルト——ナガツキ星系の小惑星帯と呼ばれる小さな岩石やら氷やらが密集している場所まで遠征してきている。


 今まで捕らえた宙賊にナガツキ体操をやらせようとしたら勝手にアジトの場所を自白したのだ。


 仲間を売るとは人の心がないのか?



「これから我々ナガツキ軍は宙賊のアジトに突撃を敢行する。全員遅れるなよ?」


『駆逐艦ダッシュ了解』

『駆逐艦ゴーダツ了解』

『駆逐艦ブンドル了解』



 このナガツキ艦隊の威容はどうだ。


 なんと頼もしい事か。



「ツバキ様。宙賊がアジトから出撃してきています。数は小型艦28、駆逐艦2、巡洋艦1」



 オーリエにオペレーターを頼んで正解だったな。戦場にある一輪の花だ。


 なお、キミドリはアンドロイドなので恋愛対象外である。



「データによると、敵の巡洋艦と駆逐艦は一世代古い型の軍艦だね。性能的には現行の物より総合力が5%程度劣るみたい」


「ふむ。軍からの横流し品か? 軍内に悪い奴がいるらしい」


「可能性は高いですね」



 キミドリの説明では一世代古いとしても性能差が5%程度。なら運用に問題はない。


 それよりも王国軍に宙賊との内通者がいるという事が問題だ。お蔭で軍艦がタダで手に入るのだから、可能な限りこの問題は放置しておくとしよう。



「巡洋艦は俺が捕獲する。他は任せたぞ」


『駆逐艦ダッシュ了解』

『駆逐艦ゴーダツ了解』

『駆逐艦ブンドル了解』



 戦艦バトルギャラクシスを巡洋艦に体当たりさせて俺は宇宙へと飛び出す。


 巡洋艦の制圧は特に障害らしい障害もなく、乗組員を全員殴り倒して難なく奪い取る事が出来た。


 俺が巡洋艦を奪い取っている間に味方たちも艦の奪取に成功したようだ。


 巡洋艦は大き過ぎて嵩張ってしまうので、駆逐艦や小型艦を優先してバトルギャラクシスに収容していく。


 巡洋艦は自力で航行してもらおう。



「うーん……。やはり数が多いと逃がしてしまうな」



 捕獲できたのは巡洋艦1、駆逐艦2、小型艦16だ。小型艦を12隻も取り逃してしまった。



「まぁ良いか。アジトに突入して財産を根こそぎ奪おう」



 俺達は続けざまに宙賊アジトに突入した。


 小さな岩石をくりぬいて作られたであろう宙賊アジト。小さな、とは言っても直系にしておよそ15㎞程の小惑星だ。


 戦艦バトルギャラクシスが全長2㎞である事を考えれば十分デカい。


 宙賊のアジトに現金は殆ど無かったのだが、換金性の高い貴金属やら物資やらが相当貯めこまれており、アジトそのものも居住可能な設備が整っているので換金できそうである。



「嬉しいお知らせだキミドリ。大幅に借金が減るぞ」


『良かったね。頭おかしいツバキ君』



 通信機越しにキミドリから良く分からん罵倒をもらいながら、物資をバトルギャラクシスに積み込む作業を行った。


 補足しておくと、宙賊は全員ナガツキ領の開拓星送りで決定だ。開拓事業を頑張ってもらいたい所存である。素手で。



「キミドリ。このアジトは曳航出来るのか?」


『出来ない事はないけど、シュタイン総合商社にそのまま売った方が楽だと思うよ?』


「じゃあそうしよう」



 俺は早速シュタイン総合商社に連絡を取る。



『もしもし。何でも売ります買いますがモットーのシュタイン総合商社営業担当のカネスキーと申します。本日はどのようなご用件でしょうか?』


「もしもし。ツバキ=ナガツキだ。宙賊のアジトと小型艦を売りたい」


『これはツバキ様。毎度ありがとうございます。出張買取サービスのご利用ですね? 現在地を教えて頂ければ査定に伺いますよ』



 俺はカネスキーに現在地を教え、出張買取サービスを利用する事にした。


 それにしてもこの営業マン。お金が好きそうな名前である。



























「本日は出張買取サービスのご利用ありがとうございます」


「あぁ。出来るだけ高く見積もってくれ」


「勿論です。それにしても状態の良いアジトですね。普通、戦闘により多少の傷は出来るのですが……」


「その辺は上手くやったからな」


「ですか…………っと、従業員から査定が出ました。このくらいでいかがでしょうか?」



 カネスキーが提示した値段はなんと驚きの115億7000万リウム。それもアジトだけの値段でだ。


 それとは別に、換金性の高い物資やら小型艦の見積もりは26億3500万リウムだった。



「かなり大規模な宙賊だったようですね。今後も良いお付き合いが出来るかと思い、端数を繰り上げた額で提示しております」


「よし売るぞ」


「ありがとうございます」



 この額で買い取ってもらえるなら、多少は手元においた方が良いかもしれないな。


 何かあった時に現金を残しておくのは大事だ。



「よろしければツバキ様の艦をメンテンナンスしては? 今回は大きな取引も出来ましたし、サービス致しますよ?」



 メンテンナンスか。今後も宙賊から艦を奪い取る事を考えれば必要だな。


 しかし金がな……。



「ちなみにいくらだ?」


「そうですねぇ。戦艦1、巡洋艦1、駆逐艦5、となりますと……通常なら6000万リウムです。破損具合によりますが、この額を下回る事はないかと」


「うーん……」


「今回はオマケして無料で請け負います。提案なのですが、宙賊アジトを手に入れたらその度に査定額をお渡しする事に加え、メンテンナンス費用はこちらが持ちましょう」


「え? そんな事して大丈夫なのか?」


「勿論条件があります」



 それもそうか。


 何でもかんでもサービスというわけにもいかないだろう。



「私カネスキー宛に宙賊アジトの出張買取サービスを申し込んだ場合に限ります。他の社員に売った場合はメンテンナンス費用の工面は致しかねます」



 成る程。自分の営業成績を上げる為か。


 なかなか上手い奴だ。



「その話、乗った。今後もよろしく頼む」


「ありがとうございます。良いお取引が出来ました」


「こちらこそだ」



 とりあえず115億リウムを借金返済に充て、27億500万リウムは残しておこう。


 兵士の皆にボーナスを配らないといけないしな。



「ツバキ様。各艦の結界も強化した方が良いのでは?」


「確かに」



 オーリエの言う通りだ。兵士たちが安心して宙賊艦を強奪出来る環境を整えなければならない。


 艦の結界を強化し、撃墜されないようにしよう。



「艦の結界ユニットを最新式の軍用仕様に換装するのでしたら1隻あたり、駆逐艦が1600万リウム、巡洋艦が6400万リウム、戦艦が2億5000万リウムで御座います」


「結界ユニットを倍積む事は出来るか?」


「出来ますが……兵装の搭載スペースが1/3減りますよ?」



 たった1/3で良いのか。



「なら三倍積んでくれ」


「えっ!?」



 カネスキーは驚いた顔で俺を見ている。



「戦闘に支障が出ませんか?」


「問題無い」



 体当たりをして兵士たちが相手艦にダイナミックお邪魔しますを敢行するだけだからな。


 念の為武装も少しは残しておくが。



「本当によろしいので?」


「勿論だ」


「では一度シュタイン総合商社の工場にお越し下さい」








 その後見積もりを出してもらったところ、金額は作業代含め3億8000万リウム。


 駆逐艦3隻は既に最新の結界ユニットが搭載されていたので追加で二つずつ購入して搭載し、残りの駆逐艦と巡洋艦は元々あった物と最新式の物とを入れ替える事で多少安く済ます事が出来た。


 ちなみに戦艦バトルギャラクシスの結界ユニットは入れ替えない方が強いという事でそのままだ。


 これで借金は1568京9509兆9885億913万リウムで、手元にある金は23億2000万リウムとなる。端数の500万リウムは兵士達にボーナスと言って盛大に配ってやった。


 にしてもオシッコちびるくらい借金減ったな。



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