第3話 軍艦奪取

 ムソリ少尉率いる王国軍人を殴り倒した後、駆逐艦を戦艦バトルギャラクシスに収容した。


 今日は大儲けだな。



「この艦を売ったらいくらになるだろうか」


「王国軍の軍艦を売るのはマズいんじゃ?」


「大丈夫だ。宙賊に売れば良い」


「え?」


「宙賊に軍艦を売る。その後に俺が軍艦を奪い取る。王国軍に感謝される」



 素晴らしいサクセスストーリーだ。もしかしたら可愛くてごめんねな第二王女様も俺に惚れるかもしれない。


 え? そうなったらどうしよう。



「マッチポンプじゃん……」


「マッチでもポンプでも良いじゃないか。それに元々ムソリ少尉が仕掛けてきたんだからな。とりあえずこいつらは開拓星送りだ」


「ツバキ様、また刑罰ですか?」


「違う。刑罰じゃなくてお仕事だ」



 我が領は非常に貧しく、基本的に農業か別惑星の開拓に従事するしかない。


 どちらも魔導機械の類はごく一部の人間を除いて手に入れられない環境なので、こいつらを送り込んでどちらかの仕事をひたすらやってもらおう。


 刑務所に入るよりは良いだろう。



「ツバキ様は刑務所に入るより良いと思ってますね? 間違いなく刑務所の方が環境は良いですよ?」


「そんなはずはない。自由にのびのびと農業をしたり開拓したり、スローライフを楽しみながら更生してもらうのだ」



 まぁ、うちの星に来た宙賊は宇宙艦から出た瞬間に潰れて死ぬので、仕方なしに別惑星の開発に従事させるのがお決まりのパターンだ。


 死ぬ原因は不明なので、俺は風土病を疑っている。


 いや、単に骨粗しょう症かもしれないな?



「スローライフって……碌な道具がありませんよね?」



 オーリエは不思議な事を言う。


 そんなもの素手でやれば良いじゃないか。俺や領民は皆そうしているぞ。



「ねぇ、本当に軍艦を宙賊に売るの? 指名手配されるよ?」


「指名手配なんてされるわけないだろ。俺は汚職事件を解決しただけだ」



 本当ならそんな事よりお食事券が欲しいところだ。



「その通りではあるんだけど、考え無しに軍艦を売るのがマズいって」



 それもそうか。



「ならどうする?」


「私に任せて…………ハッキング完了。駆逐艦の識別コードを無所属に変更した」



 奪い取った駆逐艦に手を当てながらとんでもない事を言いだす管理AI型アンドロイド。



「お前、何故そんな事が出来るんだ? 1000年前の戦艦だって話だろ」


「お前じゃなくてキミドリって呼んでよ。あの駆逐艦は私から見ると技術レベルがあり得ない程旧式だね。人類文明って何度か後退したりした?」


「良く分かったなキミドリ」



 かつて人類同士の戦争で技術が何度も後退を繰り返したと聞いている。現在では人類が宇宙に飛び出した頃以下にまで技術レベルが下がっているとの噂だ。


 ロストテクノロジーが数多くあり『愚かな人類め』と歴史の先生が農業の傍ら呟いているのを良く見かける。



「宇宙戦艦バトルギャラクシスは王国歴1150年にリーゼ博士によって改修された超兵器。あの頃の兵器群と比べても性能が飛び抜けていて、搭載された兵器はあらゆるものを破壊し、自動防衛システムにおいても完璧だよ」



 成る程。凄いという事だけは分かった。



「相手の艦を捕獲する兵器はないのか?」


「ない。だって戦艦だよ? 捕獲兵器なんて積むはずないじゃん」



 くっ……。何て役に立たないんだ。


 相手を破壊したら借金返済の足しに出来ないじゃないか。



「キミドリ。今後は兵器の使用を避けろ」


「そんな事してどうすんの?」


「俺に考えがある」



 移乗攻撃で敵艦を奪い取れば大儲けだ。何故だか知らんけど、軍人たちは人類にあるまじき弱さだった。


 我が領に住む子供にも劣るような雑魚が王国軍人なのである。



「先ずは領都星に戻ろう」


「どんな考えがあるのかは知らないけど、今の艦長はツバキ君だからね。従う事にするよ」



 キミドリは何故か不服そうだ。兵器を使用しあらゆる物を破壊したい衝動でもあるのか?


 なんて危険思想な管理AIだろう。


 ほのぼのと牧歌的に畑を素手で耕し、素手で木を伐採する俺や領民たちを見習って欲しいものだ。



「とにかく兵器は使用しないでくれよ?」


「……うん」



 キミドリを説得し終え、オーリエのポイント稼ぎを頑張っているといつの間にか領都星に着いていた。


 俺は捕獲した軍艦を再利用する為、乗組員を募集する。すると嬉しい事に、10人もの領民が名乗りを上げてくれたのだ。



「今日から君たちは我が軍の兵士となる。主な任務は宙賊狩りだ。宙賊の船を捕獲すればボーナスで全員に1万リウムを支給する」



 兵士となる者たちは大喜びで笑い合っている。皆俺と同様ボーナスに憧れがあったんだな。



「とりあえず出発は三日後だ。食料の干し芋を忘れるなよ?」



 おおー! と声を出し、気合十分な兵士たち。


 士気も高く、なかなかに精強な兵なのではないだろうか?



『やぁツバキ君』


「あ、先生」



 俺に歴史を教えてくれたモックス先生だ。



『愚かな人類から駆逐艦を奪ったのか?』


「まぁね。ところで先生はどうして愚かな人類って言うんだ?」


『無駄な戦争で数々の技術を失い、今では宇宙に飛び出した頃以下の技術レベルに落ち込んでしまった。だから愚かな人類といつも言うのだ』


「それは何度も聞いた。先生も人類だろ? なのに愚かな人類って言うのが不思議でね」



 先生は俺が小さい頃から今と同じ若い見た目だけど間違いなく人類だ。


 人類には召喚出来ないタイプの悪魔を時々召喚して農作業を手伝わせているけど、多分人類だと思う。


 ひい爺さんがまだ子供だった時から色々と教わっていたらしいし、声が二重に聞こえるんだけどモックス先生はやはり人類なんだろう。



『我は邪神だと何度も言っているじゃないか。良いかいツバキ君? 愚かな人類と変に迎合してはダメだよ?』


「俺も人類なんですが」


『何を言うんだ。ここに住む人たちは皆人類から進化した種族じゃないか』


「先生それ毎回言ってるけど、俺達は皆ちゃんと人類だってば」


『ははは。これ程の高重力で普通に生活出来る存在を人類とは呼ばない』



 先生はたまに変な事を言う。


 この星は最初から今の重力だし、領に住む人々は皆当たり前に生活している。特に高重力だとは思った事もない。



「それより先生。今日は何を教えてくれるんだ?」


『そうだな……。駆逐艦も手に入れたようだし、戦闘艦のあれこれを教えてあげようか』


「助かるよ」



 先生の話によれば、駆逐艦10隻が巡洋艦1隻に相当し、巡洋艦5隻が重巡洋艦1隻に相当するらしい。


 なら戦艦はと言えば、重巡洋艦3隻で戦艦1隻の戦力換算となるそうだ。


 駆逐艦換算ならその数は驚きの150隻。それが戦艦という兵器の力であった。



「為になった。これで宇宙に飛び出しても怖くない」


『ダメダメ。分かった気になるのは早い。戦艦の上には機動要塞があるのだからね。王国軍は製造技術こそ失ってしまったけれど、機動要塞を5つ所有している』



 成る程。



『リーゼ博士によって造られた機動要塞は現行の兵器と隔絶した技術レベルの超兵器だから、最強の戦艦バトルギャラクシスがあったとしても無闇に突撃したらダメだ』


「分かった」



 きっと慎重且つ臨機応変に突撃すれば良いって事だ。流石は先生。頼りになる。


 それはそうと、どうしてモックス先生は戦艦バトルギャラクシスが強いって知ってるんだろう?


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