第2話 宙賊との戦い

 無事相手艦に取り付く事に成功した俺は、先ず電子ロック部分に「あちょぉっ!」と貫き手をする。


 グシャッと手が電子ロック部分に突き刺さり、プシュっと音を立てて扉が開いた。


 王家から2年前に貰ったお誕生日プレゼントの漫画を参考にしたのだが、無事成功のようだ。電子ロックは銃で撃つと開くのがお決まりのパターンだからね。


 戦艦バトルギャラクシスからは『ちょっ……ツバキ君!? 何やってんの!!』と声が聞こえたがうるさいな。


 俺は男爵家の当主として、宙賊の財産を根こそぎ奪わねばならないのだ。


 宙賊の艦にダイナミックお邪魔しますを敢行し、操縦席にいる宙賊を殴り倒してせっせと戦艦バトルギャラクシスの収容スペースに移動させる。



「先ずは1隻捕獲。よし、次の目標はあれだ」


「絶対にダメ!」


「良いから接近しろ」


「その命令は受けつけないよ!」


「ならお前が我が家の借金を払え」


「借金があるの? そういう事情なら、この艦の装備を多少売ってもらって構わないけど……」



 ふむ。発言から察するに、こいつはなかなかのお人よしだな?



「借金は1568京9510兆1億リウムだ。払ってくれると助かる」


「さて、あの艦に体当たりするからしっかり掴まっててね」


「キミドリは美女アンドロイドだし、売ればいくらかの足しになるよなぁ……」

「行くよ! ほら、あれを捕まえてしっかり稼ごう! 余計な事考えてちゃダメだって!」



 払ってはくれないのか。


 けちっ。



「案外薄情なAIだな」



 結局俺の指示通り動く事となった戦艦バトルギャラクシスはもう1隻の艦にぴったりと接舷する。


 そして俺は先程同様宙賊艦にダイブを決めて「ほあちゃっ!」と貫き手をかまして扉をこじ開け、ダイナミックお邪魔しますを敢行した後に操縦席の宙賊を殴り倒した。



「宙賊艦を2隻も捕獲できた。これは儲かったぞ」



 キミドリとオーリエは俺を化物でも見るような目つきだ


 何故そのような目で見られるのか皆目見当もつかん。



「あり得ないよね? 移乗攻撃って色々な道具を揃えて慎重にやるんだよ?」


「慎重だったろ」


「どこが!? 生身で空中ダイブ決めといて慎重もクソもあるかっ!?」


「儲かったんだから良いじゃないか」


「はぁ……。何を言っても無駄だね」


「ツバキ様は無茶する人でしたけど、ここまでとは私も思いませんでした」



 俺はオーリエにも無茶する奴だと思われていたようだ。


 このくらいなら俺の領民も皆出来るけどな。



「ところでさ……この惑星は人間が居住する適正重力の100倍だよね? 重力制御装置のコストも馬鹿に出来ないし、引っ越す事をおすすめするよ」


「知らん。何だそれ?」



 人間の適正重力とか言っても、領民は昔からこの星に住んでいてここが気に入っている。


 言い掛かりはやめて欲しい。



「重力制御装置なんて使ってないぞ」


「はい? 100倍の重力下じゃ生き物は住めないよ」


「俺も領民も貧しいなりに重力制御装置無しで健康的に生活をしている」


「いやいやいやっ……え? 本当に?」


「本当です。私は王家から重力制御装置を持たされ派遣されていますので無事ですが、ツバキ様も領民も重力制御装置は使っていません。そんな物を買うお金もありませんし」



 お金が無いとか言うなよ。悲しくなるじゃないか。


 しかしオーリエがそんな物持ってるなんて知らなかったな。



「100倍の重力を生身で……?」


「100倍と言われても知らん。俺も領民も生まれた時からここに住んでる」


「そんな事あり得ない……でも、ツバキ君の魔力値を見ればあながち嘘とも言い切れないか。君、本当に人間?」



 俺の魔力値はごく平均的な530万でしかないが?



「俺の魔力値は530万です」


「通常の人類の平均値知ってて言ってんの? 馬鹿な事ばっか言ってないで宙賊艦を売却しなよ」


「へいへい。とりあえずオーリエはシュタイン総合商社に連絡をしてくれ」


「はい」



 俺に指示されたオーリエはシュタイン総合商社の出張買取サービスにお願いし、宙賊艦2隻と積み荷を売却する事で1540万リウムを手に入れた。


 その中の20万リウムで当面の食糧とオーリエにネックレスを購入し、残りは借金返済に充てる。


 無限に広がる大宇宙での活動には食糧が必須だからね。食料が尽きたら目も当てられない。


 残りの借金は1568京9510兆8480万リウムだ。めっちゃ借金減った。



「ツバキ様。こんなに素晴らしい物を頂いてよろしいのですか?」


「今までたくさん働いてくれたからボーナスだ」



 俺はボーナスが大好きである。貰った事もあげた事もないので一種の憧れがあったのだ。



「ありがとうございます」



 オーリエは感動しているようだ。


 貧乏男爵家の俺には結婚相手の候補がいない。ついでに言うなら借金が多くて女性が寄ってもこない。


 少しでもポイント稼ぎをしてオーリエをぞっこんラブにしなくては。たとえ可能性が1%にすら満たなくとも。



「あのさ……ネックレスが13万はおかしくない? 13万で食糧を購入して7万のネックレスをプレゼントすべきなんじゃ?」


「女心の分からない奴め」


「……借金返済の為にはなりふり構っている場合じゃないよ?」



 なりふり構わずオーリエを落としにかかっているのだ。邪魔はしないで欲しい。


 管理AIは人の心がわからない。






























 程なくして俺達は無限に広がる大宇宙へと飛び立った。


 オーリエは「私も行きます。メイドですから」と言って付いてきてくれている。もしかしたら俺に恋しているのかもしれない。



「当面の活動は宙賊を狩る事だ」


「当面の活動と言いますか、生涯の活動になりそうですけどね」



 ふむ、生涯現役か。それも悪くはないな。



「一日に1500万リウム稼げたとして、100年経っても1%すら返せない計算になるね」


「いつか返せる日が来るさ」



 多分。



「ここから約1万㎞前方に駆逐艦を発見。あれは……軍艦だね。イットリウム王国軍の識別コードを発してるよ」


「何だ宙賊じゃないのか」



 財産を奪えないなら用はない。それに王国軍人って一部微妙に偉そうだから面倒なんだよね。



「王国軍より通信。艦を停止し臨検を受けろとの事。どうする?」


「勿論臨検を受けるぞ」


「そう返事しとくよ」


「頼んだ」



 この戦艦は指示するだけでほぼ全てをフルオートでやってくれるから助かるな。


 程なくして王国軍のムソリ少尉とやらが我が艦にやって来た。



「この艦は随分古い形式の識別コードを使っているな。非常に怪しいのでこの艦を引き渡してもらいたい」


「それは出来ない」


「貧乏男爵が王国軍少尉に逆らうのか?」



 逆らうっていうか……いきなり艦を寄越せは酷い。



「偉そうなところが控え目に言って嫌いだ」


「何だと?」


「あ、良い意味でね」


「貴様。良い意味と言えば許されると思っているのか?」



 うるさいな。良い意味だと言っているんだから前向きに解釈しろよ。



「お前こそ男爵に王国軍少尉が逆らうのか? 怪しいな。お前の艦を引き渡せ」



 俺はムソリ少尉を殴り倒し、反撃してきた他の王国軍人もついでに殴り倒す。


 俺のように健康な人間相手に銃の類は効かないというのに、それでも発砲してくるあたりが健気で涙を誘う。


 こいつら、驚く程弱いが本当に人類か?


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