第17話
「不安、だった」
「うん」
「雅弘はきれいな人に囲まれてて、いつもみんなに優しくて、
だからいつか雅弘を誰かにとられちゃうんじゃないかって……怖かった。
雅弘が好きって言ってくれたことも、全部夢だったんじゃないかって」
「夢じゃないよ。
俺は伊織が思っている以上に、
伊織が好きだよ」
雅弘の低い声がすーっと胸にしみ込んでくる。
「だって、つきあってるのに、雅弘はあたしのこと、
抱きしめてもくれないし、
キ……キス、だって、してくれない……」
自分の言ってしまった言葉があまりにも恥ずかしくて、
雅弘を見ることができなかった。
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