第33話 ぶつけたのは、拳じゃない
ミヤシマ興産の南関東支社ビル。 そのロビーには異様な光景が広がっていた。
リクを先頭に、かつての暴走族仲間たちが一列に並んで立ち尽くしている。 一方、奥から現れたのは鬼塚仁と影山鷹司。
鬼塚は腕を組み、ロビー全体を睨み渡すようにして言い放った。
「……ガキ共が、何のつもりだ」
リクは一歩前へ出る。
「俺たちはこの街を守る。そのために来た」
その言葉に、鬼塚の眉が僅かに動いた。
影山が冷笑を浮かべて口を開く。
「面白いな。少年たちが“正義”を語るなんて。……ずいぶんと成長したつもりのようだ」
リクはその挑発に乗らず、静かに睨み返した。 だが、その緊張の中で、後ろにいた一人――マサが声を荒げた。
「ふざけんなよテメェ……!」
次の瞬間、マサは拳を握りしめて鬼塚へ突っ込んでいった。
「待て、マサ!」
リクが声を上げ、止めに入ろうとしたが間に合わない。
鬼塚は、迫り来るマサを避けもしなかった。 代わりに、その拳を真正面から迎え、重たい一撃を叩き込む。
ドガッ!!
鈍い音とともに、マサの身体が横に吹き飛ぶ。
「う、ぐっ……!」
床に倒れ込み、苦しげに胸を押さえるマサ。
その瞬間、仲間たちの堪えていた感情が爆発した。
「テメェ……!!」 「ふざけんな!!」 「マサをやりやがったな!!」
次々に鬼塚へ向かって仲間たちが突っ込んでいく。
怒号と足音がロビーに響く中、リクは叫んだ。
「やめろ!! そいつの思うツボだ!!」
だが、止めるにはもう遅すぎた。
鬼塚は、一人、また一人と向かってくる相手を殴り、蹴り、まるで獣のように正確で無駄のない動きで薙ぎ払っていく。
影山はその様子を見ながら、静かに笑った。
「……やはり、未熟だな」
ロビーの空気は、静かな緊張から一気に暴力の熱へと変わっていた。
だが――リクの目は、冷めていた。 怒りに任せた乱闘では、何も変えられない。
その目が、何かを決めるように鋭く光り始める。
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