第44話
清一郎は部屋に入って愛丸の傍に正座した。
それで椅子に座って机に向っていた愛丸も清一郎の前へ正座して向かい合った。
「今日…レイを連れて警察に行ってきた」
清一郎の口調はやはり静かだ。
「えっ !!」
愛丸は少し驚いたが、それでも何とか気持を落ち着かせて清一郎の次の言葉を待つ。
「一応届けを出しておかないとな。捜索願いが出ているかもしれないし」
「そっ、それで……?」
愛丸は心配そうに尋ねた。
「心配しなくても身許が分るまで家で預かることになったよ」
「そう、良かった…」
身許など分るはずもないのだが、愛丸はホッとした。
これでレイは誰にも気兼ねせずに暮らせるのだから却って都合が良いかもしれない。
「ところで、警察でああいう書類を作成する時、指紋を押捺するのは知ってるか?」
清一郎の瞳にほんの少し意地悪な気配が宿るのを愛丸は見逃さなかった。
「指紋……?」
愛丸が反芻するように呟く。何となく嫌な予感がした。
「ああ。それで気付いたんだが…レイには指紋が無い」
「あっ !!」
愛丸は思わず声を上げていた。愛丸もレイも指紋にまでは気が回らなかったのだ。
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