第43話

愛丸が出掛けた後、肩を落した零に清一郎は「零、そんなに学校へ行きたいのかい?」と尋ねた。

 すると零は「いいえ、そうではありません。私はただ愛丸の傍に付いていたいだけです」と首を横に振って力無く答えた。

(えらく愛に懐いてるんだなぁ……)

 清一郎はそこの所がいまいち理解出来ない。

「それじゃあ愛と一緒の学校へ通えるように手続きを取ってみよう。事情を話せばきっと受け入れて貰えると思うよ」

「本当ですか?」

 途端に零の顔がパッと明るくなった。

「ああ、それまでは私と留守番だ」

 清一郎はニッコリ笑って頷いた。



 愛丸は学校にいる間も零のことが気掛かりで授業も上の空だ。清一郎と二人っきりで居させるのが心配でしょうがないのだ。

 何時もより時間の流れを遅く感じて苛々するが、どうすることも出来ない。

 それでも何とか放課後を迎えた愛丸は部活も暫く休むことにして急いで家へ帰ったのだった。

 しかし、意に反して零と清一郎は何故か和気藹々で、愛丸を少々気抜けさせた。

 それから何事も無く数日が過ぎ、愛丸の警戒心も序々に薄らぎ始めていた。そんなある日の夜、清一郎が愛丸の部屋へやって来て声を掛けた。

「愛、ちょっと話が有る。今良いか?」

「ん、良いけど何?」

 愛と呼んだのに何時に無く真面目な物言いの清一郎に、自然愛丸も緊張気味な応えを返していた。

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