第42話
「そう、学校に行くには手続きが必要なんだ。それが規則なんだよ」
清一郎は今度は優しく諭すように言った。
「規則…分りました。では私は此処で待ってます」
零は心配気にまゆを顰めて静かに答えた。
「良かった。分ってくれて」
清一郎はそう言うと愛丸に頷いて見せた。
「ごめん零、なるべく早く帰って来るから。じゃあ行って来る」
零の気持は分っている積もりだが、それでも学校へ連れて行く訳にはいかないのだ。
「行っておいで」
清一郎がニッコリ笑って軽く手を上げた。
「あっ、そうだ!」
玄関を出ようとしていた愛丸が急に何かを思い出したように立ち止まって振り向いた。
「ん? どうした、忘れ物か?」
清一郎が尋ねた。
「いいや、兄貴に言い忘れた事があったから」
「何だ?」
清一郎は少し不思議そうだ。
「くれぐれもショック療法だなんて、いきなり零のこと殴ったりするなよな」
愛丸は清一郎の顔をじっと見据えて言った。
「わ、私がそんなことする訳ないじゃないかハハハハ……」
「なら良いんだ。じゃ行って来る」
明らかに作り笑いを浮かべて答えた清一郎を愛丸は疑わし気に見詰めてからそう言うと(本当にその積もりだったんじゃないのか?危ない危ない)と心の中で呟きながら出掛けて行った。
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