第35話
「それは良かった。パジャマを持って来たよ、それと着替えも。私のお古で悪いけれど間に合せにはなるだろう」
清一郎はそう言って持っていた物を零に手渡した。
「お気を遣って頂いて申し訳ありません」
「いやぁ、体格もちょうど私と同じ位だし……」
清一郎は上背が180㎝以上あってスラリとしているのだが、零はそれと殆ど変わらない体付きをしていた。
「その恰好じゃ何かと不便かと思ってね、それ……スウェットスーツなのかな?ちょっと変わってるね」
確かに零の着ている服は見ようによってはスウェットスーツに見えなくもない。
「は、はあ……」
零は曖昧な返事を返した。
これには流石に零も答えに困ったようだ。
「そうだ!名前、決めたから」
愛丸は話題を変えることにした。
「名前?」
清一郎は話に乗って来た。
「名前が無いと困るだろ?だから付けたんだ」
「そうか、それで?何て付けたんだ?」
「レイ、阿毘古 零だ」
「阿毘古 零……水子霊みたいだなぁ……」
清一郎がボソッと呟いた。
「あのなァ…ひとが付けた名前にケチつけんなよ。第一、発音が違うだろっ!兎に角…決めたから」
愛丸がブスッとした顔で突っ掛かる。
「愛が連れて来たんだから愛の気の済むようにすれば良いよ」
そんな愛丸に清一郎は優しく微笑んで大人びた顔を見せて言った。
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