第34話

「そうだなぁ…ハルテンのハルを取って春男、春彦?何かダサいな……確か、認識番号の最後に0が付いてたよな……そうだ!レイにしよう。零なら呼びやすいし、似合ってるよ」

「レイ」

ミリアが反芻するように呟いた。

「気に入らなかったら別の名前を考えるけど?」

「いいえ、とても良い名前だと思います。それに決めましょう」

「良かった。じゃあ今からミリアの名前は零、阿毘古 零だよ」

「阿毘古 零ですね、分りました」

「うん」

愛丸はミリアが、いや、零がそう答えるのを聞いて満足気に頷いた。

 食事の事といい、零は素晴らしく機転が利くようだ、この分ならきっと何事も上手く切り抜けてくれるだろう。だが、安心は出来ない。

何しろ家には清一郎が居るのだから。

(兄貴の奴、あれで結構鋭いからなァ……)

愛丸がそんなことを考えていると、突然「愛、入るぞ?」と襖の向こうで清一郎の声がした。噂をすれば何とやら、ではないが、丁度清一郎のことを考えていたところにその本人がやって来たのだ。

「いいよ」

愛丸が答えると、清一郎が襖を開けて入って来た。何やら手に抱えている。

清一郎は零の顔を見ると、早速「気分はどうかな?」と尋ねた。

「お陰様で、随分良くなりました」

零が軽く頭を下げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る